目次
事業承継とは
事業承継とは、会社の経営を後継者に引き継ぐことです。引き継ぎには2つの側面があります。
- 後継者を誰にするか(経営の承継)
- 自社株を誰に引き継ぐか(所有の承継)
またこの2つに加えて、事業そのものを承継するための取り組みも必要です。
後継者が引き継いだ後も安定した経営を行うためには、株式や経営権だけでなく、ノウハウや取引先との繋がり、従業員との信頼関係や経営理念など、現経営者様が培ってきたあらゆる資産(経営資源)を承継する必要があります。
事業承継における近年の傾向
事業承継において、近年その承継先の主流が変わっています。
中小企業庁が実施した調査によれば、事業承継全体に占める親族内承継の割合は急激に落ち込み、役員・従業員や社外の第三者への承継が増加しています。特に在任期間が短いほど親族内承継の割合の減少と従業員や社外の第三者による承継の増加傾向が見られ、直近5年間では親族内承継の割合が全体の約35%にまで減少し、親族外承継が65%以上に達しているとの結果が示されています。

中小企業庁:事業承継を中心とする事業活性化に関する検討会(第1回)資料3より
背景には事業の安定性や将来性に対する不安の高まりや、後継者側の価値観の多様化などが関係しているとされています。一方で、適当な後継者がいない等の理由で廃業を選択する経営者様も多くいらっしゃいます。
日本政策金融公庫総合研究所が2016年に公表した調査によると、廃業予定の経営者様のうち約3割は「同業他社よりも業績は良い」と回答しており、大きな機会損失であると言えます。
また、中小企業庁の実施したアンケートによると、実際に廃業を選択した中小企業の経営者様が直面した課題として下記のようなものが挙げられます。
- 取引先との関係の清算
- 事業資産の売却
- 従業員の雇用先の解雇
- 債務整理
- 経営者保証の問題
- 連帯保証の問題
廃業を検討される経営者様は、事業の継続性に不安を抱えていらっしゃる場合が多いかと思いますが、「経営状況と経営課題の整理」や「事業承継に向けた経営の改善」を経ることで、M&Aによる事業承継が可能となるケースもあります。
M&A等による第三者への承継が更に浸透し、このような企業が事業承継を行うことができれば、ノウハウや技術を次世代へ引き継ぎ、地域経済へ貢献を続けることができます。
親族・従業員への承継とM&Aによる事業承継
事業承継の主な手法である、親族・従業員への承継(内部承継)とM&Aによる事業承継(外部承継)について、それぞれの課題と対応策をまとめました。
親族・従業員への承継(内部承継)
後継者の選定
後継者を決める際には、経営者としての資質のある人物を選ぶ必要があります。以前は経営者の長男が事業を承継するケースが多くみられましたが、そのような枠に囚われず、経営を取り巻く環境変化に対応し事業を継続・成長させていくことができる人物を選定することが大切です。
関係者との事前協議
後継者問題は経営者様のみならず、ご親族や従業員、また取引先や金融機関にとっても大きな関心事です。後継者をバックアップする体制を整えられるよう、早期に対話や説明を行い合意形成を進める必要があります。
債務・保証・担保の承継
- 経営者様個人が借入を行って会社へ貸し付けている
- 会社の借入に経営者保証を提供している
- 自宅を担保に入れている
こういった場合には、これらをそのままにしておくと事業承継後もそれらの負担を背負い続けることとなるため処理を検討する必要があります。
後継者の教育
後継者を選定した後は、次期経営者として望まれる能力や心構えを身につけてもらうべく教育を行います。
社内だけでなく他社や関連会社、外部のセミナー等を活用し、経営者に必要な実務スキルや思考、ビジョンを習得してもらいます。
M&Aによる承継(外部承継)
譲受企業の選定
M&Aによる第三者への事業承継は、譲受企業とのシナジー効果によって事業を発展させるチャンスでもあります。ベストなパートナーを見つけるためにはある程度の時間がかかりますが、事業内容や経営方針、企業文化など統合後を見据えた上でお互いにとってプラスになる相手先を選定することが重要です。
譲受候補先との相互理解・条件交渉
相手との合意がなければM&Aは成立しません。譲渡企業、譲受企業の双方がオープンマインドで意見交換を重ね、相互理解を深めていくことが重要です。
当社では、間に立つコンサルタントが双方の目的を理解したうえで対話による歩み寄りをサポートいたします。
情報管理の徹底
事業承継にあたってM&Aを考えていることが従業員や取引先などに意図せず伝わってしまと、上手くいくはずだったM&Aの計画も失敗してしまうことがあります。
第三者はもちろんのこと、親族や従業員についても知らせる時期・内容を十分に留意する必要があります。
M&A後の融合
M&Aはその実行が最終目的ではありません。実行後、いかに 2社の経営統合を進め、シナジー効果を最大化していくかが重要です。交渉段階での相互理解はもちろんのこと、円滑な承継のために統合後も経営者様が一定期間業務に携わるといった対応も有効です。
事業承継で引き継ぐもの
事業承継は、単なる「代表者の交替」「株式の承継」に留まらず、事業そのものを次の体制へと引き継いでいく取り組みです。承継後も安定した経営を続けるために、は現在の経営者様が培ってきたあらゆる経営資源を円滑に引き継いでいくことが重要です。ここでは、「経営権」「株式・資産」「知的資産」の3つの要素に分けて、事業承継への取り組みをご説明します。
【事業承継の構成要素】
経営権の承継
- 経営権
株式・資産の承継
- 株式
- 事業用資産(設備・不動産等)
- 資金
知的資産の承継
- 経営理念
- 経営者の信用
- 知的財産権(特許等)
- 従業員の技術や技能
- 取引先との人脈
- 許認可
- ノウハウ
- 顧客情報
- 企業文化
等
経営権の承継
経営権の承継とは、後継者へ代表取締役を交替することです。この際に最も重要なことは、適切な後継者の選定です。特に中小企業においては、ノウハウや取引先との関係が経営者個人に依存していることが多く、事業の円滑な継続や業績は後継者の経営者としての資質に大きく左右されます。
親族内承継や役員・従業員への承継においては、後継者教育や事業の引き継ぎに5年から10年以上の準備期間が必要だとされています。
経営者としての能力を身につけ、ノウハウや技術を十分に承継するためにも、後継者の選定はできるだけ早い段階で行うことが重要です。
また近年では、後継者を見つけることが困難な場合、 M&Aによる第三者への承継が有力な選択肢の一つとして認識されてきています。状況に応じてM&Aによる第三者への事業承継の可能性を視野に入れることで、事業承継が成功する可能性は大きく高まります。
株式・資産の承継
株式・資産の承継とは、事業を行うために必要な資産(設備、不動産等)や借入金を含む資金、そして会社の株式を引き継ぐことです。
贈与や相続によって株式・事業用資産を承継する場合、資産の状況によっては多額の贈与税・相続税が発生する可能性があります。後継者に納税できる資金力がない場合には、資産を分散して承継するなど税負担を軽くするための取り組みが必要となります。場合によっては後継者の負担が事業承継後の経営に悪影響を及ぼす可能性もあるため、税負担には十分に配慮する必要があります。
また、オーナー経営者様が親族内で事業承継を行う際には、個人財産の承継や親族内の他の相続人との関係も考慮する必要があります。
このような資産の承継における重要なポイントは、事業承継に向けた準備に着手する段階で早めに税理士等の専門家へ相談することが大切です。
当社には高い専門性をもつコンサルタントが多く在籍し、 M&Aはもちろん、後継者育成や事業承継にあたっての株式対策、税金対策も行っております。
企業の状況や経営者様のご意向を踏まえ、ベストな方法をご提案させていただきますので、まずはお気軽にご相談ください。
知的資産の承継
事業承継における知的資産とは、人材や技術、特許・ブランド、組織力、経営理念、顧客基盤、ネットワークなどといった、目には見えない経営資源の総称です。顧客をもつすべての会社は何らかの知的資産を有しており、事業の運営に活用しています。
特に中小企業においては、経営者と従業員との信頼関係や組織文化といったものが事業のスムーズな運営の源泉となっていることが多く、経営者が交替することによって信頼関係が失われ、従業員の大量退職や組織文化の消失などに至り、その結果、事業自体の価値が大きく損なわれてしまうケースもあります。
このような事態を防ぐためには、早い段階で後継者と従業員との信頼関係の構築に向けた取り組みを始めること、M&Aであれば自社と文化の近い会社や理解が深い会社を選ぶなど、強みを損なわずに事業が承継できるよう準備を行う必要があります。
事業を承継する前の段階で、まずは経営者様ご自身が「何が自社の強みなのか」ということを深く理解し、それを引き継ぐための方策を検討することが重要です。
事業承継成功に向けた準備の進め方
事業承継には多くの準備が必要となります。その為、円滑に行うためには、早い段階で準備に着手することが最も重要です。事業承継に向けた準備の進め方についてご説明します。

STEP.1 情報収集と準備の必要性の認識
承継方法の検討や後継者の育成など、事業承継の準備には多くの時間を要します。
健康問題や経営環境の変化などによって経営者様が事業承継を具体的に検討し始めた時には既に手遅れになっていた、というケースも少なくありません。
まずは早い段階で事業承継の必要性を認識し、経営者様が概ね60歳に達した頃には、専門家への相談などの準備に取りかかることをお薦めいたします。
STEP.2 経営状況と経営課題の整理
事業を円滑に後継者へ承継するためには、経営状況や経営課題、経営における強みと弱みなど、自社の現状を正確に理解することが重要です。強みを伸ばし弱みを改善することで、事業承継後の事業の更なる成長と発展を目指します。
STEP.3 事業承継に向けた経営の改善
事業の整理による本業の強化や財務状況の改善、ガバナンスや内部統制の向上など、ステップ2で整理した課題を改善し、経営状態を引き上げるための取り組みを行います。
内部で承継する場合も、M&Aにより外部へ引き継ぐ場合も、事業の魅力を強化し「引き継ぎたくなる会社」へと魅力を高めていくことが重要です。
STEP.4 事業承継の実行
ステップ3まで進めてきた準備をもとに、事業を承継します。親族内承継の場合は、事業承継プランを策定し、それに基いて資産の移転や経営権の譲渡を進めます。
近年増加しているM&Aによる第三者への承継を行う場合は、仲介会社へ相談のうえ、譲受候補先企業とのマッチングや条件交渉を進めていくこととなります。
事業承継の成功事例
当社でお手伝いした事業承継の成功事例の一部です。この他にも様々な規模、様々な業種において実績がございます。
経営改善により事業を立て直し、M&Aによる事業承継で後継者問題を解消
建築業の経営者様において、経営不振を解消し事業を拡大したものの親族への承継が難しくなってしまい、M&Aによる外部承継を決断してスムーズな事業承継を実現したケースです。当社では事業再生の段階から関与させていただき、内部承継の可能性の検討から外部承継の決断、またその実行までを一気通貫でサポートさせていただきました。
M&A:事業再生から優良会社へそしてM&Aによる事業承継後継者難と資金繰り問題をM&Aによって一気に解決
60歳を迎えられたシステム開発派遣業の経営者様が、後継者の不在や借入金の問題からM&Aによる事業承継を決断し、同業の中堅企業へ事業を承継したケースです。経営者様は事業承継後も可能な限り事業に携わり続けることを希望され、M&Aによる事業承継後は資金繰りや経営に頭を悩ませることなく営業面から事業への貢献を続けていらっしゃいます。
M&A事例:齢60歳後継者不在 M&Aで見事に承継まとめ
日本では昨今、後継者問題の解決策の1つとして中小企業の友好的なM&Aが増加しており、政府もその動きを推進しています。M&Aは中小企業の経営資源の拡充のための有効な手段として認知されてきており、「身売り」や「敵対的買収」といったネガティブなイメージは薄れつつあります。
M&Aによる事業承継は、信頼できる仲介会社やコンサルタントを選ぶことで成功率が大きく高まります。
当社では、財務・会計コンサルティング会社としての経験と実績をもとに、 M&Aはもちろん、後継者育成や事業承継にあたっての株式対策、税金対策も行っております。
企業の状況や経営者様のご意向を踏まえ、ベストな方法をご提案させていただきます。ご相談はもちろん無料ですし、当社では譲渡が成立するまで報酬はいただきませんので、交渉の段階で一旦お取りやめいただいても費用は発生いたしません。
事業承継にお悩みの方はまずはお気軽にご相談ください。