こんにちは。
株式会社エスネットワークス M&A事業部の佐藤でございます。
本日より「間違いだらけのM&A」と題しまして、
我が国の企業によくあるM&Aにおける認識の間違いについて、定期的に連載をしていこうと思います。
まず第1回のテーマですが、
「『会社は高く売るべき、安く買うべき』という間違い」です。
そもそも会社の価値には、企業価値や事業価値、株主価値と色々な考え方があるのですが、
ここでは、株式譲渡を前提に株主価値(株式譲渡対価)を前提にお話をしていきたいと思います。
まず議論のはじめに、中小企業のM&Aにおける株主価値の決め方についてお話をしておきます。
中小企業のM&Aに関していいますと、一般的に売り手企業の株式譲渡対価は
純資産+営業権(直近3ヵ年営業利益の3年分等)
で算定されると言われております。
書籍やインターネット等で上記のような算定方式をご覧になられた方も多いのではないでしょうか。
しかしながら、上記の数値は、ざっくりと自社の価値を把握するための参考価格として用いられることはあるものの、それを根拠に譲渡対価が一義的に定まることはありません。
なぜなら、その数字には根拠がそもそもないからです。
では、根拠がある算定手法があるのか?
その答えは ノー だと思っています。
専門的なファイナンスのお話をすれば、DCF法や、類似企業比較法、時価純資産法等、企業価値における算定方式は色々と存在し、これらを用いて理論的な株価を算出することはできるにはできるのですが、
これらの手法にも一長一短があり(ここでは上記算定方式の詳細の説明は省きますが)、
客観的で誰もが納得できるような企業価値を算出することは絶対に不可能なのです。
では価格は一体どうやってきまるのだ!!
と、言うお話になるかと思いますが、その答えは一つであり、
「買い手と売り手のお互いが納得できる価格」
ということになります。
え、そんな適当な感じで決まっちゃうの?と思われるかもしれませんが、これが真です。
要は、全く同じ企業であっても
売り手が10億円で売りたいと思い、買い手が10億円なら買いたいと思えば、10億円が株価になりますし、
売り手が1億円で売りたいと思い、買い手が1億円なら買いたいと思えば、株価は1億円になります。
株価というのは、当事者同士によって決められるというのが実態であり、正解なのです。
そういうことであれば、例えば自社の純資産が1億円、営業利益が5,000万円くらいの会社であっても、
「私は自分の会社を10億円で売るぞ!10億円で買ってくれる会社を見つけてこい!」
というご要望をなされたくなるかもしれません。
もちろん、日本全国を探し回ればあなたの会社を異常に高く評価してくれる会社が見つかるかもしれません。
ただし、それはとても稀なケースであり、可能性は極めて低く、おすすめはできません。
やはり、相場というものは存在し、純資産+αくらいの金額を基準としている企業が現状の日本では多いという印象です。
(この相場の低さが、我が国でのM&A市場の更なる活性化を阻害している要因かもしれません)
ただし、買い手によって、または業種によっても買収価格の考え方は様々であり、大凡の相場はあるにせよ、
上記のような会社であれば1億円~3億円くらいのレンジの中で、買い手企業毎の評価は変わってくる可能性はあるでしょう。
売り手企業からすると、世の中の相場感を理解した上で適正な値付けをすることが、
M&A成立の確率を高めるものと考えます。
高く売ること、安く買うことがM&Aにおける目的、成功ではなく、
M&Aによって、売り手企業、買い手企業ともに将来の成長にプラスの影響を与え、
またEXITしたオーナーは新たな人生を切り開くことができる
これがM&Aのあるべき姿であり、金額に固執することでこの機会を逸してしまうのはとても勿体ない話です。
その上で、相対的に高く評価額してくれる企業があればとてもいいことですし、
その上で、相対的に低い評価額でも許容してくれる企業があればいいことだと思います。
我が国でM&Aがより促進され、企業、経営者の新陳代謝が高まり、
結果として世の中がさらに発展していくことを望みます。
筆者
佐藤 憲(さとう けん)過去には経理改善支援や株式上場支援、資金調達支援等の業務に携わる。その後中小企業M&A仲介ビジネスの現状に疑問を抱き、エスネットワークスらしいM&A仲介のあり方を提示すべく、2015年よりM&A事業部の立ち上げに参画。M&Aという経営者にとっての大切な決断を安心して行えるようにと、常に本気の姿勢で経営者に寄り添い続ける。 最後の最後まで何が起こるか分からないのがM&A。決して諦めない姿勢がM&Aを成功に導くと信じ、日々数多の経営者とM&Aに取り組んでいる。