三井住友銀行は15日、秋田県で農業法人を設立すると正式発表した。銀行では初の試みで、農地の集約や大規模営農を進めて新たな資金需要を掘り起こす狙いがある。農協(JA)系や政府系金融機関が独占してきた農業金融の世界に風穴を開ける。
秋田県の有力農業法人や秋田銀行などとの共同出資で、7月に自ら農地を所有して農業を営む「農地所有適格法人」を立ち上げる。高齢化で農作業が難しくなった農家から作業を受託したり、農地を借りたりしてコメ生産に着手。離農者からは農地を買い取り自社生産も手がける。同様の取り組みを他県にも広げる。
(2016/06/15 日本経済新聞)
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGC15H13_V10C16A6EE8000/
【コメント】
記事によると、これまで銀行は資金需要がある農家や農業参入企業に融資するのが一般的だったが、今回の枠組みでは銀行自身が「生産者」の一角として農地の集約や大規模化を促すとのこと。
三井住友銀行でも、土地の流動化に伴う不動産売買や、生産効率化に向けた農業機械購入などの設備投資が活発になれば、新たな融資機会を作れる。高齢の離農者向けには相続や事業承継支援などのビジネスにつなげられると考えている。
もともと農業は金融サービスとの結びつきが強いが、銀行が生産者としての立場を取ることで、提供できるサービスや取り組みは多いに拡がりそうだ。
2009年の農地法改正以降、農業に参入する企業は年々増加傾向であったが、今年の4月の改正でさらに要件が緩和されたことが今回の参入を後押しした。
農業関連の金融は政府系金融機関とJA系による「寡占市場」となってきたが、メガバンクが生産者として農業へ参画し農業経営と支援に取り組む今回の取り組みは成功すれば、業界の勢力図は大きく変化する可能性がある。
またTPPの発効や海外における日本食材の評価の高さなど、農業はグローバル展開のポテンシャルも大きい。企業向けの融資の減少が続くなか、銀行にとっては新たな収入源としての期待もあるだろう。
生産者の高齢化や次世代の担い手の不足といった問題は、多くの一次産業に共通するする課題である。
長く寡占市場であったことからも、大規模資本の参入による構造変化のインパクトは決して小さくないはずだ。
今回の三井住友銀行の取り組みがどのような展開を見せるのか、今後に注目していきたい。