孫正義社長の長期続投と有力後継者の電撃退任を受けた22日の東京市場でソフトバンクグループ株は上昇した。だが株式会社の最高意思決定機関である株主総会当日に議案が差し替えになった異例の事態に、企業統治の専門家らから厳しい指摘が出ている。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGD22H5Z_S6A620C1TI1000/
(2016/6/23 日本経済新聞)
■コメント
事業承継のトピックにおいてこれほどインパクトのある話題はないであろうと
思われるほどにセンセーショナルなトピックである。
孫社長といえども、というべきか、いや、孫社長ほどの事業意欲のある人だからこそというべきか
事業の承継、及びその意思決定は簡単にはできないということであろう。
我々はM&Aによって、経営者資源の拡充を図っていきたいと考えているが
その際に経営者資源の要素として何が重要であるかというと、
「(事業)意欲」、「能力」、「人望」の3つの要素ではないかと考えている。
これらが兼ね備わった、または将来において兼ね備わるであろう人材を経営者に
していくことによって日本経済に貢献できるのではないかと考えているのである。
その一つの要素である、「(事業)意欲」においては通常は年齢とともに衰えていく
ものであろうと思われるが、孫社長の言う「欲が出てきた」という発言は、まさしくその意欲の
発露であろうといえよう。
企業統治の観点、特に議題差し替え前の情報に基づいた議決権行使に関しては実質的に
無効となってしまった点においては今後の課題となろう。
ただ、そういったことを踏まえた上でも直前に議題を変更せざるを得ない程の孫社長の意欲
と執着に、これからのソフトバンクグループへの期待を抱かざるを得ない。
当然、人の命や意欲は永劫に続くものではないため
いずれ同様の問題が起こることは確実であるが、そのタイミングにおいては
孫社長の事業意欲の相応の沈静化と、次世代社長候補への信頼が
社長交代をスムーズに進ませる段階へと変化していくのだと思われる。
承継のタイミングはいつが確実に適切とはいえないものの、このように
ある種自然の摂理に伴う適切な交代が進んでいくこともソフトバンクのみならず
世の中的にも期待したいところである。