東芝は9日、売却を決めていた医療機器子会社の東芝メディカルシステムズについて、キヤノンに独占交渉権を付与すると発表した。18日までの最終合意を目指す。売却額は7000億円強になるとみられる。売却によって最大の懸案だった財務の改善にメドがつき、業績の立て直しに向けたリストラが本格化する。
(2016/3/9付 日本経済新聞)
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGD09H3G_Z00C16A3MM8000/
【コメント】
記事によると、財務体質の悪化が顕著となっている東芝は、かつては成長事業と位置づけていた優良子会社の売却によって7000億円強の資金を得ることとなる。これによって東芝は当初の想定より大きく自己資本を回復することとなり、「選択と集中」の取り組みを本格化することで、収益基盤を再構築を目指す。また、M&A助言会社のレコフによると、最近の国内の事業会社同士のM&Aとしては、新日本製鉄と住友金属工業の合併(約7500億円)に次ぐ規模になるとのことである。
企業再建の過程においてM&Aによる事業分離が果たす役割は様々だが、本件は財務体質の強化を主目的とした大型売却案件といえる。不振へと至った同社の構造的な問題解決とは言えないが、財務改善は再建の道筋において大きな一歩である。売却で得る資金は主に人員削減などのリストラ原資となるほか、一部は成長事業投資にも振り向けるとのこと。収益基盤の再構築と構造改革が今後の焦点となる。
本件は大企業間での大型売却案件であるが、M&A市場の拡大によって中小企業においても企業再建の選択肢が充実することが望まれる。