エスビー食品は18日、発行済み株式の2.95%にあたる20万株、9億7100万円を上限に自社株買いを実施すると発表した。19日の取引時間前に東京証券取引所の立会外取引で、18日終値の4855円で買い付ける。自社株買いは昨年11月の約20万株に続き2回目。資本効率の改善に加え、「M&A(合併・買収)やストックオプションなど機動的な資本政策に備えるため」としている。
(2015年11月19日付 日本経済新聞)
http://www.nikkei.com/paper/article/?ng=DGKKZO94166440Y5A111C1DTA000
自己株式の取得および自己株式立会外買付取引(ToSTNeT-3)による自己株式の買付けに関するお知らせ
http://211.6.211.247/tdnet/data/20151118/140120151118450220.pdf
【コメント】
最近よく耳にする企業の自社株買いであるが、その目的は大きく3つある。
一つは、ROEの改善だ。自己株式を取得するとEにあたる株主資本を減額することができるため、分母が小さくなり、結果としてROEを高めることに繋がる。しかしながら、このようなROE改善策は、表面的な会計のテクニックに過ぎず、本質的な資本効率の改善とはいえないのが実態である。
二つめは、経営学においてはシグナリング効果と呼ばれるものだ。会社側が株式を取得するということは、その会社の株価が相対的に割安であると会社が認識しているというシグナルになり(実態は必ずしもそうであるとも限らないので注意)、株式市場では買いが促進され、結果として時価総額の上昇効果があると言われている。
三つ目は、M&Aへの利用である。M&Aの手法の一つに株式交換と呼ばれるスキームがあえい、これは相手の株式を取得する対価として自らの株式を譲り渡すことであるが、会社としてはキャッシュが流出しないというメリットがあることから、よく利用される手段だ。その際に新規で株式を発行するとなると、その手続には手間を要するため、自己株式が利用されることがよくある。
近年では、ROE改善の機運から自社株買いを実施する企業が増えている印象であるが、
記事にあるエスビー食品のように、取得した自己株式の使い道として、M&Aを検討する企業も増えてくることが予想される。