アセットパーチェス

アセットパーチェスとは、M&Aの一つで、M&Aの際、財産を丸ごと引き継ぐのではなく、対象会社の商品、工場、ブランド、知的財産、従業員などの資産を、個別に買取り、引継ぐ買収形態のことをいう。事業譲受、資産譲受とも呼ばれる。

買い手は必要な資産・負債だけを選択して引き継ぐことができる反面、個々の財産・負債を契約ごとに移転させる必要があるため、手続きが複雑である。
しかし、買い手側にとっては、引き継ぎたくない資産はリストから除外することが出来るので、簿外債務や偶発債務を引継ぐリスクを減少できる。逆に財産を譲渡することを営業譲渡という。

エグジット(イグジット)

エグジット(イグジット)とは、スタートアップの創業者やベンチャーキャピタルの投資資金回収手段または方法のこと。株式を売却して利益を手にすることから、収穫という意味の「ハーベスティング(Hervesting)」とも言う。

エグジットの方法としては、株式公開による株式市場での株式売却(IPO)や、投資先企業による買い戻しや、M&Aによる他の株主への株式売却等が挙げられる。

また、イグジットをゴールとし、エグジットを行う方法やその時期、それによる出資者への見返りを「エグジット・プラン」として作成しておくことで、出資者に対して出資に対する見返りがどのくらい期待できるのかを示すことができ、出資を促す有効な手段となり得る。

アメリカでは、エグジットの9割がM&Aによるものといわれるが、日本ではこれまで、IPOが主流であった。しかし、近年ベンチャーによるM&Aによるエグジットが増加の傾向にある。

エグゼキューション

エグゼキューションとは、M&Aにおける一連の事務手続の実行や管理を行うことをいう。

売り手がM&A提案に前向き姿勢を示した段階で、買い手は買収の意向を表明、初期的検討を経て、基本合意契約の締結、デューデリジェンス、最終契約締結、クロージングまでの過程がある。

具体的には、どのようなスキームで買収するか、などといったストラクチャーの構築、契約書や文書開示などのサポート、企業価値を検討するバリュエーション業務、法務・会計・税務の詳細調査を行うデューデリジェンス業務などを指す。
膨大なボリュームのデータを取り扱うことになり、業務量は非常に多い。

これに対し、前段階の案件の発掘や提案を行うことを、オリジネーションといわれる。

オリジネーション

オリジネーションとは、M&Aや資金調達などの案件を発掘することをいう。

売手と買手を引き合わせる「マッチング」や、クライアント企業が採るべき戦略立案と、戦略に合致する買収対象を提案し、経営者に案件の遂行を決断させるように説得する「ピッチング」を含む。

市場には、成長を求めて買収機会をうかがっている企業と、業績の低迷などから売却などを模索している企業が、絶えず存在する。
アドバイザーは、多くの企業と接触し、M&Aを必要としている企業を見つけ出す。ニーズの合致する企業を互いに引き合わせ、取るべき戦略を提案、その遂行を決断に導くという作業を行う。

会社分割

会社分割とは、会社がある事業に関して有する権利や義務、資産などを、複数の法人格に分割し、新設会社として独立又は他の会社に承継させる手法のこと。
M&Aにおいて頻出スキームであるり、主に成長部門の独立や、不採算部門の切り離し等グループ内の組織再編として用いられる。

分割により新たに設立される会社に承継させるものを「新設分割」、分割会社の権利義務を既存の他の会社に承継させるものを「吸収分割」という。「新設分割」において、承継する会社のことを「承継会社」という。

ある事業の一部門に対して売買が行われるという観点から事業譲渡に類似しているが、事業譲渡が個々の資産の譲渡であるのに対し、会社分割は事業部門一体としての切り離しという点が異なる。

会社分割に際しては、分割計画書などを作成し、株主や債権者に事前に示すとともに、株主総会における特別決議による承認が必要となる。反対の意がある株主には、株式の買取請求権が、同じく債権者には異議申立権などが認められている。
また、雇用されている従業員の保護が非常に大切である。これについては、会社分割に伴う労働契約の承継等に関する法律、労働契約承継法により定められている。これによると、労働組合と交わしている労働協約はそのまま新しい会社に承継され、事前通知のみで移籍させることができるとされているが、一定の事由があれば異議を申し立てる権利が従業員にも与えられている。

承継会社・新設会社は、分割会社及び株主に対して継承の対価を割り当てる必要がある。
旧商法では、権利義務の承継の対価は、承継会社または新設会社の株式に限られていた。しかし新会社法の施行後、吸収分割の場合、承継の対価として、金銭その他の財産を交付することも可能となった。

また、旧商法では、分割会社が発行する株式を株主に割り当てることを「人的分割」と言い、親会社に株式を割り当てることを「物的分割」としていた。新会社法では「人的分割」が廃止となり、「物的分割」に一本化されたが、一旦「物的分割」を分割会社に交付した後で、剰余金の配当手続きを分割会社の株主に交付することで、「人的分割」と同様の効果を得ることも可能である。

株式移転

株式移転とは、既存の株式会社が、単独または複数で新設した完全親会社に、子会社となる既存会社の株式を移転し、それと引き換えに完全親会社が発行する株式を子会社の株主に割り当てる手法のこと。
M&Aにおける、株式会社の組織再編方法の一つ。

具体的には、純粋持株会社A社を新設し、既存のB社の株主はB社株をA社に譲渡する。その代わりに、A社はA社株をB社の株主に交付することで株式移転が完了。この結果、A社は純粋持株会社として機能し、B社はその子会社となる。

独占禁止法において純粋持株会社が解禁されたことに伴い、株式交換制度と共に株式移転が導入され、1999年10月施行の商法改正により可能となった。いずれも原則として株主総会における特別決議が必要である。この点を含め、手続上は株式交換に準じているが、形態面では新たに親会社を設立して完全子会社化の実現を図る点で株式交換とは異なる。

株式移転は株式交換と混同されがちだが、他にも明確な違いが多数ある。
株式交換では完全親会社が、完全子会社となる企業の株主に交付する対価として、金銭その他の財産をあてることも可能だが、株式移転では株式、社債、新株予約権のみが交付可能であり、金銭等の交付は認められていない。そのため、子会社化される企業の株主に交付する対価の額が不相応に過大となる恐れが無いことから、株主総会ではこの点に関する取締役の説明義務は課されていない。
なお、これら企業再編に反対する株主には、株式買取請求権が与えられることとなっている。

株式交換は他の企業買収に対しても利用可能だが、株式移転では不可能となっており、買収が出来ない。また、株式交換は合同会社でも利用可能だが、株式移転では株式会社である必要がある。
既に存在している会社を買収に利用しようとしても株式会社でないのならこの方法は利用出来ないため、企業の買収対策としては非常に意義の有る方法といえる。

また、株式移転は企業合併と比べ、完全な統合ではなく、緩やかな統合といえる。その為、合併に進む前段階として、株式移転が選択されることも多い。

株式交換

株式交換とは、売り手企業の既存株主がその保有株式を買い手企業に譲渡し、買い手企業はその対価として自社株式を割り当てる手法のこと。対価を株式とするため、買い手が上場企業でない場合にはあまり用いられない。

ある株式会社が、発行済株式の全部を他の株式会社または合同会社に取得させ、100%子会社化するための企業再編手法の一つ。
原則として、当事会社の発行する株式数及びその帰属のみを変えるものであり、当事会社の法人格や保有財産には影響を及ぼさない。

株式交換により100%親会社となる会社を完全親会社、100%子会社となる会社を完全子会社という。完全子会社となる予定の会社の株主は、株式交換契約によって定められた株式交換比率によって、完全親会社の株式を割り当てられる。
これは、1999年商法改正により導入された手法で、これにより株式会社は、時価総額が大きければ、たとえ手元に株式を買い取るための資金を持たなくとも、自社株式を対価に企業買収することが可能となった。
また、現金や買収会社の完全親会社株式等も利用することができる。完全子会社の発行している株式が譲渡制限株式であっても、譲渡承認手続きは不要である。

資金準備の必要がないことが大きなメリットだが、原則として双方の会社で株主総会の特別決議が必要である為、スケジュール上の制約を考慮する必要がある。
また、税務上、適格要件を満たさなければ課税関係が発生する可能性もあるなど、株式譲渡に比べると手続きが煩雑なことや、買収価格の内のれん相当額について償却できず、節税の恩恵を受けられないなど、デメリットも多い。

買い手企業が非上場株式会社の場合、売り手企業は非上場株式と自社の株を交換するため、現金化が難しいというデメリットもある。互いに上場株式会社である場合は、そういったデメリットはないものの、株価は変動していくものであるため、株式市場におけるリスクは常に背負うことになる。
さらに、買い手の企業に株式を譲渡するため、売り手の企業のオーナーが株主として、買い手の企業の経営に参加することが出来るようになる。これをデメリットと考え、忌避する買い手側の企業もある。
上記を踏まえ、買い手企業の株価の変動が激しい場合は、現金での買収額と比べた上で譲渡資金が上乗せされる場合もある。

株式取得

株式取得とは、対象企業の株式を取得し、対象企業を支配可能な議決権を握るM&Aの手法の一つ。株式譲渡ともいう。

株式を取得するには、既発行株式を取得する方法と新たに発行する株式を取得する方法がある。
既発行株式を取得する方法は、主に以下がある。

  • 大株主である創業者等と1対1の売買(相対取引)により取得する方法
  • 証券取引所の市場等から取得(市場内買付け)する方法
  • TOB(株式公開買付)により取得する方法
  • 自社株との株式交換・移転等により取得する方法

新たに発行する株式を取得する方法は、主に以下がある。

  • 新株予約権の行使により取得する方法
  • 第三者割当増資により取得する方法

株式の持ち分によって、会社へ関与できる権利の内容がかわる。
議決権と株主の主な権利は、以下の通りである。

  • 1株以上:株主提案権
  • 総株主の議決権3%以上:総会招集請求権・役員の解任請求権・業務の執行に関する検査役選任請求権・役員等の責任軽減への異議権・会計帳簿閲覧請求権
  • 総株主の議決権25%以上:相互保有株式の議決権停止
  • 総株主の議決権3/1超:合併・事業譲渡等の重要事項に関する特別決議を単独で阻止できる
  • 総株主の議決権1/2超:取締役選任等の普通決議を単独で成立させられる
  • 総株主の議決権3/2超:合併・事業譲渡等の重要事項に関する特別決議を単独で成立させられる

上記の様に、発行済み株式数の2分の1超を獲得すると、取締役選任等の普通決議を単独で成立させられる。いわゆる「子会社化」と同義とになる。

株式譲渡

株式譲渡とは、M&Aの手法の一つで、対象会社の株式を譲渡することによって経営権を移転させる手法をいう。

株式譲渡による会社譲渡には後継者問題の解決、企業の存続と再発展、創業者利益の確保など数多くのメリットがあり、近年、後継者問題に悩む多くの中小企業が事業承継の手段として選ぶケースが増えてきている。
また、事業承継だけでなく、会社の成長や従業員の雇用継続のためにも有効で、中堅中小企業のM&Aでは、一般的に用いられる手法。
会社名や会社が持っている債権債務、契約関係等は全て引き継がれるため、個々の契約の移転手続きが不要であるため、数ある買収手法のうちでも最も簡便な手法といえる。

会社の支配権を移転するためには、少なくとも議決権の過半数の移転が必要であり、特別決議要件等を考慮すると2/3以上の譲渡を想定することが一般的。

経営権が買い手企業へ移ると、多くの場合買い手企業から新しい経営者が派遣されることが多く、現経営者は退任やリタイアを選択する場合もある。もしくは、経営のスムーズな引継ぎのために代表権のない会長、相談役、顧問などのポジションで会社に留まることも多い。一方で、傘下に入った後も代表者の地位にとどまり、引き続き企業と共に成長される道を選ぶ経営者もいる。
従業員の処遇については、友好的な株式譲渡の場合、従業員のモチベーションを配慮し、大幅な人員削減や給与水準の切り下げなどは行われず、譲渡前と同じような待遇で働くことができる場合が多く、これは大きな利点と言える。

一方で、売り手企業を丸ごと引き継ぐため、予期せぬ簿外債務などが発覚した場合、高い買い物となるリスクがある。その為、買い手企業にとっては、M&A成立前のデューデリジェンス(買収監査) が非常に重要となる。

なお、既存の取引先との関係性やこれまでのブランド力を活かす為、会社名はそのまま利用されるのが一般的だが、買い手が知名度の高いグループ企業であれば、そのグループ名を社名に追加することもブランディング戦略の一つと考えられている。

また、取引の対価が現金であるため、売り手である株主が売買差益を得ることなども特徴の一つとして挙げられる。
経営者の中には、40~50代で自身が経営する会社をM&Aで売却し、老後のための資産を作るケースもある。
現在のところ一般的な手法とは言えないが、ライフスタイルが多様化している昨今、老後の生活資金を作る手段として使い得る手法と考えられる。

株式の持ち合い

株式の持ち合いとは、複数の企業が、お互いの発行済株式を相互に保有すること。経営権の取得、企業の集団化、グループ企業や親密な取引先間での安定株主工作、敵対的買収の回避などを目的とする。

但し、保有する株式の比率が高くなり過ぎると、実質的に相手企業の議決権を支配してしまえる場合が発生する。そうした状態を回避するため、会社法では、株式持ち合いを行っている企業が議決権の4分の1の株式を保有した場合には、議決権が行使できないと規定されている。
信託銀行を除く、上場企業の2社が相互に株式を保有している状態の株式を相互保有株式という。

戦後の財閥解体後から、日本における株式の持ち合いの形成は始り、1960年代の資本自由化に際しては外資対策としても強化された。1980年代後半高度経済成長下においては、大株主や株主市場からの圧力を受けない経営を可能とし、取引先企業との関係強化や経営の自立性確保に繋がった。
しかし、1990年代バブル崩壊とともに景気が長期間低迷すると、株式の持ち合いによる資金繰りの悪化、相互の株価下落による業績への悪影響や非効率性が顕著化し、解消する動きが進んだ。
銀行等が株式の持ち合い解消のために、短期間で大量の保有株式の売却することで起こる市場の株価の急激な下落が問題となり、それを抑えるため、2002年には銀行等保有株式取得機構(銀行が持ち合いなどで保有している株式を一時的に買い取る機構)が設置された。

2013年、アベノミクスの成長戦略の一環で示された、企業統治の強化を官民挙げて実行する上で上場企業が守るべき行動規範を示した企業統治の指針「コーポレートガバナンス・コード」が推進され、資産投資効率を高める動きから株式の持ち合いは解消が進んでいる。

企業合併

企業合併とは、複数の会社が法的に一つの会社となることをいう。合併の形態は「吸収合併」と「新設合併」とに分類される。

吸収合併は、合併当事会社のうち一社が他の会社を吸収して存続し、会社の財産、従業員等一切の権利義務を包括的に継承し、他の会社は清算手続を経ずに解散して消滅する形態をいう。

新設合併は、合併を行う全当事会社が「消滅会社」として解散し、受け皿として新会社を設立し、合併当事会社の従業員、財産等の権利義務等の一切を新設会社に承継させる合併形態を言う。

実際には、新設合併では登録免許税などのコスト面で不利になることが多い上、既得の許認可等が白紙に戻り営業に必要な許認可等は新たに取得する必要がある。また上場会社の場合には新たな上場手続が必要になるなど、合併当事会社すべてを解散させる手続きの煩雑さから実務的には、吸収合併が圧倒的に多く新設合併が行われる例は極めて稀である。

第三者間のM&Aにおいて、いきなり合併が実行されるケースは少ない。一旦は株式譲渡を実行し、買い手企業の100%子会社とした後、時期をみて合併を行うという場合が多い。

クロスボーダーM&A

クロスボーダーM&Aとは、「国境を越えて行うM&A」の意。国際間での企業の合併や買収取引のことであり、M&Aの当事者のうち、譲渡企業または譲受企業のいずれか一方が外国企業である場合をいう。

M&Aには、国内企業が国内企業を買収する「IN-IN」取引、国内企業が海外企業を買収する「IN-OUT」取引、海外企業が国内企業を買収する「OUT-IN」取引の3つのパターンがある。
この内、国をまたぐIN-OUTとOUT-INをクロスボーダーM&Aと呼ぶ。

近年では日本企業が海外企業を買収するIN-OUT件数が少しずつ増加傾向にある一方で、海外からの買収OUT-INのケースは減少傾向にある。IN-OUTは一件につき莫大な資金が投じられることが多いため、ニュースなどでも話題になりやすい。

IN-OUT型M&Aの例としては、ソフトバンクがイギリスの半導体開発大手であるアーム社を買収、アサヒグループがベルギーのビール世界最大手アンハイザー・ブッシュ・インベブから東欧5カ国のビール事業を買収、三菱東京UFJ銀行がタイのアユタヤ銀行を買収などが挙げられる。人員や販路だけで無く、自社にはない技術を取り入れ、更なる成長を目指す国内企業が海外の大企業の買収に成功している。

OUT-INによるM&Aの例では、2016年世界最大電子機器製造受託メーカーである台湾の鴻海(ホンハイ)が日本企業のシャープを買収が挙げられる。元々は発注元であったシャープを、下請けであった鴻海が買収したという事実は、OUT-IN型M&Aの怖さを示した例といえる。

IN-OUTの場合、欧米の会社を対象とすることが多いが、OUT-INに関しては、中国の買い手が高額で買収を実施しているのが大きな特徴と言える。

現物出資

現物出資とは、株式会社の設立あるいは新株発行に際して、金銭以外の財産(不動産、有価証券、債権、特許権等の知的財産権等)を出資すること。

会社設立や株式を取得するつまり資本金を出資する際には、資本金を用意するためにお金を用意する必要があるが、賃借対照表に表示される簿記上で価値がある金銭以外の財産が存在すれば、それを実際の現金の代わりに出資しても良いことになっている。
この出資の対象となる金銭以外の財産としては、土地、建物、設備などの不動産、有価証券、債権、特許やノウハウなど等の知的財産権等が挙げられ、事業のため継続使用を目的としている限り、固定資産に限定されず、一切の財産が対象となる。

それらが取得する株式の価値に見合う出資であることを確認するために、裁判所の選任する検査役の調査を受けなければならない。
しかし、この調査には三つの例外も存在している。
■出資した金銭以外の財産が500万円以下または資本金の5分の1以下の場合
■市場価格の存在する有価証券をその価格で超えない範囲で出資する場合
■公認会計士、不動産鑑定士、弁護士といった専門家に財産の価格を適正に評価してもらった場合
この様に、現物出資をするからと言って必ずしも外部から厳格な審査が行なわれなくてはいけないということではない。

また、会社設立にあたって現物出資をする際には、価格などを定款及び発起人決定書(複数の場合は発起人会議事録)にその旨を明記することは必須。忘れてはいけない重要事項である。

会社分割では、移転対象事業に関連する資産等が包括的に承継され、個別単体の財産の分割は認められていないが、現物出資は増資を引き受ける対価として個々の資産等を給付する行為であり、個々の権利義務を選択的に承継させることができる。

ゴーイング・プライベート

ゴーイング・プライベートとは、株式の非公開化(非上場化)の意。上場会社が、公開市場で取引されている株式をすべて買い集め、市場での取引を停止することをいう。「プライベタイゼーション」とも呼ばれる。上場会社自らが積極的に上場廃止する点が特徴である。

これは、対象である上場会社の大株主または経営陣と外部の投資家が出資した特別目的会社(SPC)などが、主としてTOB(株式公開買い付け)やMBO(マネジメント・バイ・アウト)等によって発行済株式を取得し、取引所に上場廃止申請を行うことによって達せられるものである。

上場廃止においては、必ずしも全発行済株式を取得する必要はないが、M&Aにおけるゴーイング・プライベートでは上場廃止を行う前に少数株主を排除し、経営権を完全に100%掌握することを目的として行われることが多い。

ゴーイング・プライベートは一般的に、経営難の上場企業を買収後に経営再建する場合や、非公開化した方が経営面でメリットが高い場合などに実施される。

上場廃止した場合、資本市場で広くかつ多額の資金を集めることは出来なくなるため、資金調達は容易ではない。加えて、会社外部からの経営チェックが行われなくなるために恣意的な経営に陥りがちという側面もある。
しかし、上場廃止することで、上場会社としての金融商品取引法上の法定開示義務等の法的義務や、IRコスト・上場コスト等の費用負担をなくすことができるというメリットもあり、経営面においては、自由度が大きく広がり、抜本的なリストラや事業再編など経営改革をスピーディーに進めることが可能となる。
また、上場廃止をすることで、敵対的買収に対する防衛策の一つとしても利用される。

その他、敵対的買収を受けた経営者が、MBOの後に行う事例や、ESOPによって行う事例もある。

日本での具体例としては、ワールド、ポッカコーポレーション、すかいらーく、チムニー、吉本興業、コンビ、ローランドなどが挙げられる。

合弁企業

合弁企業とは、複数の企業が互いに出資し、新しい会社を立ち上げて事業を行うこと。
合弁会社またはジョイント・ベンチャー(joint venture)ともいう。

主に、複数の企業が出資しあって新たに会社を設立する形態と、既存企業の株式の一部を買収し、その企業を既存の株主や経営陣と共同経営する形態で展開される。一般的には、新たなに会社を設立する場合が多い 。

合弁企業を設立する形態は、買収・合併と提携の中間に位置する。
買収や合併は、いくつかの企業が完全に同じ企業となるため、資本の力で強力に推進することができる反面、組織文化の摩擦により、逆に失速の原因になってしまうこともあるというリスクも存在する。また、一度買収や合併が行われれば解消は困難である。メリットは大きいが、上手く機能しなかった場合にデメリットも大きいと言える。
提携は、資本を伴わないためスムーズに展開できる一方、予想外の調整コストが発生したり、資金による強制力がないために途中で解散してしまい、想定以下の成果しか出ないこともある。

これらの中間に位置する合弁企業は、買収や合併ほど企業に影響を及ぼすものではないが、資本の支出を伴うため解消は提携ほど容易ではなく、ある程度の強制力が働く。
合弁企業は、それぞれの企業が強みを発揮し、リスクを分散しながら新規ビジネスや販売促進を展開、短期間で成果につながりやすいというのが大きなメリットである。
例えば、顧客リストを持つ企業と協力すれば、コストや手間を省きながら売上増が見込め、各々の販売路や地の利を活かした事業活動が利用できる。
その一方で、合弁相手企業との企業習慣や経営方針などでトラブルの発生する場合や、過去には業務委託先からの個人情報の流出といったトラブルの事例も存在する。
また、それぞれの意向を確認しながら進めていくため、自社だけで行うよりもスピード感は遅くなる。

お互いにとってメリットがデメリットより上回る状況にすることを念頭に、お互いのリスクや手間を引き受けるという考えを持てば、合弁企業事業はよりスムーズに展開し成功に近づくと考えられる。

合弁企業の近年の事例としては以下のようなものがある。
「ビックロ」という名前で共同出店し話題になったビックカメラとユニクロは、互いの顧客層も取り込める他、一等地に出店しても経費負担を折半できるという魅力があり、ビジネス拡大、経費削減両方の観点で効果が見込める事例。
LINEとサイバーエージェントとが設立した合弁企業は販売プラットフォームと、開発力をあわせた異業種の事例。それぞれが足りない部分を補うために、合弁企業が有効だということが分かる。
また、Amazonが商品発送の際に、他社のチラシを合わせて配るというのも合弁企業事例の一つ。Amazonの様な顧客リストのある企業と、新規顧客を探している企業が協力する事例は多く存在する。

シェルカンパニー

シェルカンパニーとは、企業買収を目的とした実態のないペーパーカンパニーのこと。
企業実体が無いという意味で、Shell(貝)という言葉が使用される。
M&Aにおいては、SPC (Special Purpose Companyの略称) 特別目的会社の事を指す。

企業は直接の主体となる100%子会社としてシェルカンパニーを設立し、この会社を通じて、株式の買占めや買収に必要な資金調達が行われる。

主にLBOの手法を用いる場合などに、買収に必要な資金をプライベートエクニティファンドや金融機関から調達や、更に負債による資金調達でレバレッジをかける場合にも主体として利用される。
また、グリーンメールを要求する、持株比率を上げて発言権を得て会社売却などを迫るといった敵対的M&Aを仕掛ける場合にも利用されることがある。

現在アメリカではシェルカンパニーの違法利用を取り締るための法整備が進んでいる。
会社売却を伴うM&Aにシェルカンパニーが利用される、そのこと自体に違法性があるとは一概には言えないが、脱税やマネーロンダリングといった違法性を持つものに大きく加担しているケースが多いのが理由である。
資金フローが不透明になるという特性があるシェルカンパニーは、カモフラージュしやすく、敵対的M&Aの仕掛け人にとって有利にはたらいていると言える。
現在アメリカ政府は、受益者の情報の開示義務を強化する法整備を強固に支持することが表明されている。会社を設立した際に所有者特定や確認の義務を課し、現行の経営実態がない会社に関してもこの開示義務を設ける方針とされている。これは脱税を行おうとしている者や、敵対的M&Aの仕掛人にとって大きなダメージとなると考えられる。

事業承継

事業承継とは、会社事業の経営と所有を現在の経営者から後継者に引き継ぐこと。M&Aによって他社に譲渡することも広い意味での事業承継といえる。

事業承継には、後継者を決める人的継承「経営承継」と株式・経営の譲渡を行う物的継承「資産承継」の2つの要素があり、その両方が承継されて初めて事業承継が成立する。

これまでは親族内承継が主流であったが、近年では親族外承継、特に、M&Aが事業承継の手段として選択されるケースが多くなってきている。
これは、M&Aを行なうことで将来的な不安を、事業譲渡する企業の経営者自らが判断してこれを回避するものであり、存続が危ぶまれる状況の場合、有効的なM&Aを行ない企業譲渡することで、会社売却と同時に承継問題が解決できる為である。

M&Aによる事業承継は売り手側、買い手側双方にメリットがある。
売り手側の経営者にとっては、後継者問題、従業員の雇用、相続税対策などに有効であり、買い手側にとっては、技術・ノウハウ・ブランド・人材等の獲得による事業の拡大・多角化・競争力の強化において時間・コストを節減できる効果がある。

一方、親族継承では無くM&Aでの事業承継が増加している背景には、経営者の高齢化による後継者不足の問題がある。非上場企業で経営者が高齢期の企業に多く見られる問題で、後継者がいないことで現在の事業経営者が、事業継続に不安を抱き、事業承継を買収企業に託すというケースである。
また、株式の承継の際には、承継者が多額の相続税・贈与税などの資金を払う必要があるため、オーナーが優秀な親族への事業承継を考えていても容易には行えないことも原因の一つである。

上場企業の場合、株主による議決権が行使され、株主総会で任命を受けたものが取締役として指名される為このような懸念は無いが、非上場企業の場合、株のほとんどを取締役やその家族が保有しており、もし後継者がいない場合、そのまま事業継続が出来なくなる。この状況は、全国どの事業所でも深刻化してきている。

国も危機感を持ち、中小企業経営承継円滑化法や事業承継税制の制定・拡充など、スムーズな事業承継を支援するための法・税制の整備が行われている。

スムーズな事業承継のために、周囲の理解の獲得に加え、株式の買取資金や税金など様々な問題を解決する必要があり、早期から時間をかけて取り組むことが大切である。

事業譲渡

事業譲渡とは、対象会社の事業全部又は一部を他の会社に譲渡すること。
会社ごと売買するのではなく、特定の事業に関連する資産や負債を譲渡したい場合や、対象会社の債務を切り離すことを目的に選択される、M&Aにおける手法の一つ。

店舗や工場といった土地建物などの有形固定資産や売掛金・在庫などの流動資産、営業権 (のれん) や人材、ノウハウといった無形資産も譲渡対象。

譲受会社は必要な資産のみを譲り受けることが可能で、法的に簿外債務の承継リスクを回避できる。また、従業員の雇用条件を当事者の事業に応じて設定することが可能である。

譲受会社においては、会社法により、事業の全部もしくは重要な一部の譲渡に関しては、株主総会の特別決議による承認が必要となる。また、譲受側と同一市町村内では同一の事業を一定期間行うことができない競業禁止義務が定められている。

会社分割と比較して、債権者保護手続が不要なためスケジュール的には有利と言えるが、法的には個別の譲渡として扱われるため、原則的に個別の同意を得た上で行う必要があり、自動的には継承さない。
譲受側にとっては、権利義務関係の個別の引継ぎ、契約関係の更新など煩雑な手続きを踏む必要があるうえ、事業の売買の対価は原則金銭で支払われるため、消費税負担が係るなど有利不利判定が求められる手法である。

個人商店の場合は「営業譲渡」とも呼ぶ。

第三者割当増資

第三者割当増資とは会社の資金調達方法の一つ。株主であるか否かを問わず、特定の第三者に新株を引き受ける権利を与えて行う増資のこと。
株式を引き受ける申し込みをした者に対しては、新株もしくは会社が処分する自己株式が割り当てられる。
会社の株主資本を充実させ、財務内容を健全化させる効果がある。

会社の資金調達方法の一つであるが、株式を引き受けた者の議決権比率が高まることから、M&Aにおいても活用される。
取引先、取引金融機関、自社の役職員などの縁故者にこの権利を与えることが多いことから、「縁故割当増資」ともいう。

第三者割当増資は、会社売却や友好的M&Aの手法として利用されることが多い。特によく行われるのは、第三者割当増資の対象先と、合弁会社を設立するという方法。新株引受先に優良企業がなることで市場に対する評価を高め、株価の下落を避ける狙いがある。

また上場会社の場合は、敵対的買収の対象となった会社が、買収会社の持株比率を低下させるべく、防衛策の一環としてホワイト・ナイト(白馬の騎士:対象会社にとって友好的な事業戦略上のパートナー等)に対しておこなう場合もある。

株式数が増えることで株式の希薄化(ダイリューション)による株価下落を招きかねない。既存株主には不利になるため、第三者割当増資の実施に際しては,発行条件を含めて株主総会の特別決議が必要となる。

敵対的買収

敵対的買収とは、買収者が買収対象会社の取締役会の同意を得ないで買収を仕掛けること。M&A戦略方法の一つ。

経営陣の意向に逆らって、対象会社の株式を市場で買い集めたり、TOB(株式公開買付け)を実施して対象会社の株式を買い付けることにより、対象会社の経営権を取得することを意味する。よって敵対的TOBともいう。

現経営陣の同意が得られていない段階での買収活動になるため、対抗措置が取られたり、現経営陣と激しい闘争が繰り広げられることになりやすい敵対的な関係になるということを意味する。
「敵対的」という言葉のイメージから悪印象を与えやすいが、実際には、仕掛けられた経営陣にとっては敵対的であっても、経営陣以外の株主や従業員、顧客にとっては友好的な場合もあり 、特別悪い手法で買収が行われることを意味するものではない。
遺恨を残す場合もあるため、断行されたケースはあまり多くはないが、多少強引でも、速やかな会社売却に結び付けていくことが求められる場合もあり、敵対的買収に踏み切ることが結果的に評価につながる場合もある。

2009年9月7日米食品大手クラフト・フーズは英製菓大手キャドバリーに対し、全発行済み株式を評価した額として、102億ポンド(約円1兆5600億円)での買収を申し入れたが、キャドバリー側は評価が低すぎるとこれを拒否。
2010年1月19日クラフトが当初の条件から買収金額を上積みし総額115億ポンド(約1兆7000億円)で再提案、キャドバリー側はこの買収提案を受け入れた。

一時は買収を巡り敵対関係にあった両社だが、クラフトが当初の条件から買収金額を上積みして再提案したことで、キャドバリー側が態度を軟化、一転して友好的な買収での決着に落ち着いた。
クラフトは結果的により多くの資金をキャドバリー買収に注ぎ込まざるを得なくなったが、キャドバリーの取締役会は全会一致で買収提案の支持を決め、株主に提案受け入れを促した。
世界第2位の食品企業であるクラフトは、既存の菓子に加え、キャドバリーのチョコレート菓子を手中に収め、世界最大規模の製菓会社が誕生することになった。
国際間の買収では金額ベースで7番目、食品業界としては6番目の規模。
キャドバリーは「クロレッツ」、クラフトは「オレオ」や「リッツ」などが有名。

反対に、対象会社の経営陣の同意のもとに行われる買収を友好的買収という。

テンダー・オファー

テンダー・オファーとは、「株式公開買付」のこと。日本において、株式公開買付の中でも敵対的な株式公開買付(TOB)と区別して、友好的な買付のことをこう呼ぶ場合がある。

株式公開買付とは、買い付け期間、株価、目標取得株式数を事前に公表し、証券取引所を経ずに不特定多数の株主から株式の買付を行うこと。一般投資家保護の目的で、会社の経営県の変動につながる、議決権の3分の1を超える大きな買付けを市場外でおこなう場合は、原則としてこの方法によらなければならない。

アメリカ英語圏では「株式公開買付」の意として一般的な呼び方で、投資銀行の世界ではtender offer or public tender offerという言い回しが多く使用される。

日本では株式公開買付のことを、英語のTake Over Bidを省略してTOB(ティーオービー)と表すことが多いが、英語圏では「Takeover Bid」又は「bid」と言うことが多く、TOBとはあまり略さない。
また英語圏では友好的TOB を「friendly bid or offer」 敵対的TOBを「hostile bid of offer」と呼び、区別している。

買収

買収とは、買収元企業が、買収先企業を支配する目的で、買収先企業の株式の半分以上を、現金または株式交換により取得したり、特定の事業部門を買い取ったりすることをいう。事業譲渡や会社分割なども買収とよばれる。

発行済み株式数の2分の1超を獲得すると、取締役選任等の普通決議を単独で成立させられ、3分の2超を獲得すると、合併・事業譲渡・組織再編等の重要事項に関する特別決議を単独で成立させることができる。

既にその事業分野で実績のある企業の買収は、自社で新規に事業を立ち上げたり強化するのに比べ、時間の節約につながる可能性が高い。

なお、買収には、友好的買収と敵対的買収がある。
友好的買収が、買収者と買収される会社の経営陣との合意に基づくものであるのに対し、
敵対的買収は、買収者が対象会社の意に反する形で、株式を買い集め買収を行おうとするものであるが、買収防衛策の発動などによって阻止されることが多い。
日本で行われるM&Aのほとんどが友好的買収である。

分割型分割

分割型分割とは、会社分割の形式のひとつである。
会社分割には、「分社型分割」と「分割型分割」があり、新設法人に営業の全部又は一部を承継させる新設分割と、既存の他の法人に営業の全部又は一部を承継させる吸収分割がある。

分割型分割は、分割をして事業や組織を引き継ぐ会社の株式の割当先が「分割会社の株主」である場合をいう。その為「人的分割」ともいわれる。
一方、分割をして事業や組織を引き継ぐ会社の株式の割当先が、分割会社である場合を「分社型分割」という。

なお2006年に施行された会社法では「分割型分割」の規定は廃止されたが、分社型分割の形で一度分割会社が株式を取得し、それを株主に剰余金の配当として交付するという形で、従来の分割型分割と同様の効果を得ることができるとした。

分社型分割

分社型分割とは、会社分割の形式のひとつである。
会社分割には、「分社型分割」と「分割型分割」がある。

分社型の会社分割では、分割をして事業や組織を引き継ぐ会社の株式の割当先が、「分割会社」である場合をいう。分社型分割は「新設分社型分割」と「吸収分社型分割」に区分される。

新設分社型分割

新設分社型分割は、事業の一部を分割し、その資産や負債も新設会社へ承継し、その対価として新設会社の株を分割会社の株主が取得すること。現物出資に似た性質を持ち、「物的分割」とも呼ばれる。M&Aの局面では、分社型分割によって新たに100%子会社をつくり、その会社の株式を譲渡する、などといった形がある。グループ内の組織再編としても用いられる。

吸収分社型分割

吸収分社型分割は、会社の不採算事業を切り離し、その事業に特化している会社に吸収されることにより、分割会社のスリム化及び、分割承継会社の事業拡大を目的として用いられる。

分社型分割に対し、分割をして事業や組織を引き継ぐ会社の株式の割当先が、分割会社の株主である場合を「分割型分割」という。

友好的買収

友好的買収とは、買収側がM&Aされる側の会社の経営陣の同意を得て、対象会社の買収を行うこと。
第三者割当増資などがこれにあたる。

友好的買収は、双方にとってシナジー効果が見込める場合が多い。
具体的には、買収側の大企業は、中小企業の新たな技術やサービスを手に入れることが目的になるのに対して、売却側の中小企業は大企業のブランド力やネットワーク力などを手にすることが可能となる。このように双方にとってM&A後のシナジー効果が見込めれば、友好的な買収が実現する。

また、友好的買収は、売り手と買い手の利害が一致している為に、M&A後も従業員の雇用が守られ、事業が継続する傾向にある。
日本で行われるM&Aのほとんどが友好的買収である。

これに対し、買収者が買収対象会社の取締役会の同意を得ないで買収を行うことを「敵対的買収」という。

EBO

EBOとは、Employee Buyout(エンプロイー・バイアウト)の略称。

企業の経営陣ではなく従業員がその企業の株式等を取得し、事業を買収したり経営権を取得したりする取引のことで、M&A手法の一つ。

一般的に、中小企業などを中心に後継者がいない場合に利用されている。
これは、その会社に長年勤めてきた社員に承継させれば、業務自体に慣れているため承継がスムーズで、かつ社長の想いや経営理念も承継してくれる可能性が高いなどの理由から、会社の事業継続がうまくいくという考え方によるものである。
規模の大きな会社では、従業員の資金だけでは株式を購入するに足りないこともあり、その場合投資ファンドや金融機関などの第三者が出資に加わることも可能となっている。第三者の出資比率が高い場合は、一定期間経営して企業価値を向上させた後の株式公開を前提としており、株式公開によって出資資本の回収を目的とする投資ファンドによるものが多い。
特に上場会社の場合は、従業員、経営陣、投資ファンドなどが参加するケースが多くなっている。

経営陣がこれを行う場合をMBO、経営陣と従業員が一緒に行う場合をMEBOという。

IN-IN

IN-INとは、国内企業(in)によって国内企業(in)が合併や買収が行われること、つまり同じ国の企業同士によるM&Aである。「IN-IN型M&A」ともいわれる。

IN-INに対して、外国の会社が国内の会社を買収することを「OUT-IN」国内の会社が外国の会社を買収することを「IN-OUT」と言う。

M&Aの成功件数は2006年をピークに落ち込んでいたが、2010年のリーマンショック以降、再び年々増加傾向にある。ピーク時の件数はまだ越えられていないものの、回復傾向にあるといえる。その内訳の大半は国内企業同士のIN-INである。
非上場会社同士、あるいは個人含めて行う様なM&Aは、そもそも公表する義務はない為、公表されていないM&A件数も相当数存在している。一般的に、約1万件程度は公表されずに国内でM&Aが成立していると言われている。

近年のIN-INによるM&Aの例では、CANONが東芝メディカルシステムズを買収、富士フイルムが和光純薬工業を買収など、業界としては医療関係のM&Aが目立っている。

かつては、会社の喪失、解体といったネガティブなイメージが伴っていたM&Aであるが、昨今では積極的に活用、あるいは選択肢の一つとして考える会社が増加している。
国内で安定して利益を上げるために自社よりも小さな企業を傘下に入れるケース、また、資金の調達状況の悪化に伴う経営の建て直しを目的としたケース、経営が上手く運んでいても経営者が高齢になり引退する時点で後継者が育っていないケースなど、友好的な方法としてM&Aを選択するケースも多い。
事業承継補助金等、国もM&Aに対して協力的な制度を設定しているため、それも後押しになっていると考えられる。

IN-OUT

IN-OUTとは、国内企業(in)によって外国企業(Out)合併や買収が行われること。「IN-OUT型M&A」ともいわれる。国をまたいで行われる「クロスボーダーM&A」の一種。

IN-OUTに対して、国内の企業が国内の企業を買収することを「IN-IN」外国の企業が国内の企業を買収することを「OUT-IN」と言う。

M&Aの成功件数は2006年をピークに落ち込んでいたが、2010年のリーマンショック以降、再び年々増加傾向にある。ピーク時の件数はまだ越えられていないものの、回復傾向にあるといえる。その内訳の大半は国内企業同士のIN-INである。近年では日本企業が海外企業を買収するIN-OUT件数が少しずつ増加傾向にある一方で、海外からの買収OUT-INのケースは減少傾向にある。

IN-INの成功件数自体は全体の約7割と着実に数が増加しているものの買収価格はさほど高くない。それに対してIN-OUTはIN-INに比べ、件数は3分の1程度だが、金額は3倍近い。つまり一件につき約10倍の莫大な資金が投じられることが多いため、ニュースなどでも話題になりやすい。

近年のIN-OUT型M&Aの例としては、ソフトバンクがイギリスの半導体開発大手であるアーム社を買収、アサヒグループがベルギーのビール世界最大手アンハイザー・ブッシュ・インベブから東欧5カ国のビール事業を買収、三菱東京UFJ銀行がタイのアユタヤ銀行を買収などが挙げられる。人員や販路だけで無く、自社にはない技術を取り入れ、更なる成長を目指す国内企業が海外の大企業の買収に成功している。

1980年代、円高やバブル経済を背景に、日本企業における「外国買い」が流行。ブリジストンによる米ファイアストンの買収やソニーによるCBSレコードや米映画大手コロンビアピクチャーズの買収など、一度ピークを迎えた後減少したが、現在は再び安定して増加し始めている。
増加の背景として、少子高齢化問題や成熟社会により日本国内需要が伸び悩む中、企業のグローバル化は国家戦略の優先課題であるとして、日本政府は海外進出を推奨しており、アベノミクスで実施された異次元緩和による円安の影響も大きいと考えられる。

IN-OUT型M&Aの相手としては欧米の会社が多くみられる。かつてバブル期には、欧米系企業は日本企業によるM&Aに対して抵抗感を示す傾向にあったが、昨今ではそういった感情は緩和されつつある。
「自社にはない、国内にない技術」や「成長」を買うために、M&Aが有効な手段として、大企業だけでなく、中小企業や国内の企業同士が協力し海外進出を進めるようになってきている。
また、東南アジアやアフリカといった市場はインフラなども開発途上であり、若手の働き手が豊富な為、進出する企業が増えてきている。その他、欧米諸国の日本車や日本食といった「日本ブランド需要」を狙う企業も少なくない。

一方で、M&Aに失敗した件数も少なくない。非常に高額な金額が運用されるM&Aはその分リスクも高く、それが、件数が増え辛い一因となっていると考えられる。

IPO

IPOとは、「Initial(最初)Public(公開)Offering(売り物)」の略で、未上場企業が新たに株式を証券取引所に上場し、公開することをいう。日本語では「新規公開株」、「新規上場株式」と言われ、新たに株式が公募されたり、上場前に株主が持っていた株式が売りに出される。

金融市場から直接資金を調達出来るようになるとともに、知名度の向上や社会的信用を高めることが出来る。
また、IPOは売り残りが出ない様にするため、一般的に公募価格は割安で設定される。上場したタイミングで株価が大きく上昇するケールが多いため、高確率で利益が見込めるといったメリットがある。

ベンチャー企業が出資を受けた外部投資家に投資回収の提供を求められた際の、手法の一つでもある。

IRR

IRR とは、Internal Rate of Returnの略称、直訳すると「内部収益率」の意。

投資額と投資に伴った収益の現在価値の累計額が等しくなるような割引率または利率のこと。つまり投資プロジェクトの正味現在価値(NPV)がゼロとなる割引率または利率を指す。

買収ファンド等が投資案件を実行するかしないかを正しく判断するために必要な重要指標の一つで、事業会社同士のM&Aにおいても、指標の一つとして用いられることが多い。

投資額と投資に伴った収益の金額が同額の金額となった場合に0%となって、収益の額が投資した額を上回る場合にプラスとなる。一般的に、このIRRが必要収益率(資金調達コスト)より上回れば投資すべきであり、下回れば投資すべきでないという投資評価がなされる。

実際使用される例としては、会社の設備投資に対して、毎年一定のキャッシュを回収し、その設備や会社売却をする事になった場合にIRRを使用。ただIRRだけでは判断しづらい為、資本コストと比較し、高い場合には「投資する必要がある」低ければ「投資する必要はない」と判断する。

LBO

LBOとはM&A手法のひとつで、Leveraged Buyout(レバレッジド・バイアウト)の略称。
買収に必要な資金を、買収対象企業の資産や将来的なキャッシュフロー増加を担保にして調達する方法。
少ない自己資本で、相対的に大きな資本の企業を買収できることから、てこの原理(leverage) になぞらえて「レバレッジド・バイアウト」と呼ばれる。また、こうしたM&Aに対する金融を「レバレッジド・ファイナンス」と呼ぶ。

LBOを用いて企業買収をした後は、買収先の資産を売却した利益や、買収先のキャッシュフローからLBOによる借入金を返済していく。

日本におけるLBOを使った買収事例としては、ソフトバンクによるボーダフォン日本法人(現・ソフトバンクモバイル)の買収が過去最大で、買収総額1兆7千億円のうち1兆円をLBOにより調達した。

また、LBOの際、SPC(特別目的会社)が資金を調達して買収対象企業を合併させることが多く、この場合は本来の買い手はその借入金に対して債務を負わないことが大きな特徴と言える。
つまり買収対象会社は、自分が買収された時に使われたお金を、自分で返済することとなる。

このような「本来の買い手」に債務が発生しないローンのことをノンリコースローン(Non-Recourse Loan)、略してNRLと言い、不動産取得等の資金調達でも広く活用されている。

M&A

M&Aとは、Mergers and Acquisitionsの略称で、企業の合併と買収の意。

主な手法としては、株式譲渡、事業譲渡、合併、会社分割等があり、広義の意味として資本・業務提携まで含める場合もある。何をもってM&Aの成立とするのかは、手法により異なる。

また手法により異なるメリット・デメリットがあり、M&Aを行う目的によって使い分けられている。
目的として、譲渡側は、後継者問題対策や創業者利益の獲得、エグジット、事業の選択と集中、企業再生等がある。譲受側は、既存事業の規模の拡大、新規事業の獲得、シナジー効果、人材や技術の確保等がある。

買収先企業の取締役会の合意を得た上で行われる友好的なM&Aほか、合意なく一方的にTOB(株式公開買付)などを仕掛ける敵対的なM&Aもしばしば見受けられる。

近年の日本のM&Aの傾向としては、上場会社などの大企業のみならず、中堅・中小企業同士のM&Aが急速に増えている。背景としては、経営者の高齢化にともなう後継者不足が主たる理由であり、日本政府も現代の深刻な後継者不足問題を危惧し、M&Aによる親族外継承を推奨している。

MBI

MBIはM&A手法のひとつで、Management Buy in(マネジメント・バイイン)の略称。

業績の低迷している企業を金融機関や投資家が買収し、外部から専門家を送り込んで経営状態を改善。企業価値を高めた上で、最終的に株式売却などで利益を得る、企業買収の一形態である。
経営人材不足だが、技術力やブランド力がある場合などで有効とされる。

これに対し、現経営陣が会社を買収して母体会社から出て行くことを、Management Buyout(マネジメント・バイアウト)、略してMBOという。会社商号や屋号などを継承するいわゆる「のれん分け」や、上場企業において株式非公開化などの目的や、敵対的買収への対抗策として用いられる。

MBO

MBOはM&A手法のひとつで、Management Buyout(マネジメント・バイアウト)の略称。経営陣による企業買収の意。

具体的には、経営陣がファンドやベンチャーキャピタル、金融機関などの支援を受けて自社を買収すること。経営陣自らが既存の株主から自社の株式を取得することによって、所有と経営を一致させる効果がある。

オーナー企業の事業承継や、会社商号や屋号などを継承するいわゆる「のれん分け」に用いられる場合もある。

また、上場企業において株式非公開化などの目的や、
経営陣が自社株を取得することにより経営権を獲得し、株式非公開化をすることで敵対的買収にさらされることを回避する目的でも利用されている。

日本では2005年11月、上場企業であるアパレル大手のワールドが、経営破綻あるいは上場廃止基準に抵触したという要因からではなく、経営上の判断によりMBOで株式の非公開化をしたことは、国内初の出来事として注目された。
この他にも、「TSUTAYA」チェーンを運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)や、ポッカ、すかいらーくなどの大企業が続々と利用している。

MEBO

MEBOとは、MBOの一種で、Management Employy Buyout(マネジメント・エンプロイー・バイアウト)の略称。
企業買収の手法の一つで、経営陣と従業員が一体となって自社の株式を取得する方法。
MBOとは、経営陣がファンドやベンチャーキャピタル、金融機関などの支援を受けて自社を買収すること。買収後にも同じく現在の経営陣の下で経営を行うという買収手法。

買収の主体が誰なのか、何が目的かによって下記の通り呼び名が異なる。
MEBO:MBOの経営陣と一部の従業員により対象会社の株式や事業部門を取得する方法
EBO:従業員が対象会社の株式や事業部門を取得して経営を行う方法
MBI:対象会社の外部のマネジメントチームにより、会社と事業を取得する方法
BIMBO:対象会社の外部から新経営陣を迎え、新たな経営手法を導入して現状の経営陣と共に買収や経営を行う方法

OUT-IN

OUT-INとは、外国企業(Out)によって国内企業(in)が合併や買収が行われること。「OUT-IN型M&A」ともいわれる。国をまたいで行われる「クロスボーダーM&A」の一種。
OUT-INに対し、国内の企業が国内の企業を買収することを「IN-IN」国内の企業が外国の企業を買収することを「IN-OUT」と言う。

日本における「OUT-IN」のケースは減少傾向にあり、その理由として、日本市場の閉鎖性、製品・サービスに対するユーザーの要求水準の高さ、ビジネスコストの高さ、規制・許認可の厳しさ、人材確保の難しさ等が挙げられる。

海外企業が日本に子会社を設立し、設立した子会社が対象企業と株式交換等を行うことにより、海外企業の傘下に収める、いわゆる三角合併によるM&Aが2007年5月より解禁となり、OUT-INによるM&Aの注目度は増している。

近年のOUT-INによるM&Aの例では、2016年世界最大電子機器製造受託メーカーである台湾の鴻海(ホンハイ)が日本企業のシャープを買収が挙げられる。元々は発注元であったシャープを、下請けであった鴻海が買収したという事実は、OUT-IN型M&Aの怖さを示した例といえる。

また、全体の傾向としては、経営不振に陥る国内企業を中国企業が買収するケースが増えてきている。
IN-OUTの場合、欧米の会社を対象とすることが多いが、OUT-INに関しては、中国の買い手が高額で買収を実施しているのが大きな特徴と言える。
M&A全体からすると、OUT-INの成約件数、金額は共に増えてはいないが、今後の大企業の動向や業績等よって、件数を増やしていく可能性は十分考えられるといえる。

SPC

SPCとは、Special Purpose Companyの略称で、特別目的会社のこと。
特別目的会社とは、債権や不動産の流動化や証券化など限定された目的だけのために設立される会社のことを指す。

M&Aにおいては対象会社を買収する目的で設立される。
SPCを買収主体として金融機関から借入等を行い、少ない資本と多額の借入金を原資として対象会社を買収する手法が利用される。買収後はSPCと対象会社が合併することも多い。
買収に必要な資金を、買収対象企業の資産や将来キャッシュフローを担保にして調達する(LBO)際にSPCを利用すると、資金調達の際の債務を買収対象企業に引き継ぐことができる。

TOB

TOBとは、Take Over Bidの略称で株式公開買付のこと。日本において多く使用されている略称だが、英語圏では「Takeover Bid」又は「bid」と言うことが多くTOBとはあまり略した表現はされない。

上場会社の株券等を発行会社または第三者が、不特定かつ多数の人に対して、あらかじめ買い付け期間、株価、目標取得株式数を事前に公表して、株券等の買付等の申込み、又は、売付け等の申込みの勧誘を行い、条件に同意した株主から有価証券取引所外で株券等の買付けをおこなうことを指す。

TOBでは、通常市場より高い株価を株主に対して買取価格として提示する為、大量の申込が見込まれる。

一般投資家保護の目的で、会社の経営県の変動につながる、議決権の3分の1を超える大きな買付けを市場外でおこなう場合は、原則としてこの方法によらなければならない。

TOBの公募期間は最長営業日60日以内で、応募が3分の2まで達しなかった場合はTOBの取り消しが可能となり、リスクが回避できる。しかし、3分の2以上となった場合は、買付者は応募のあった株式を全て買い取らなければならない全部買付義務がある。

TOBには、対象会社の取締役会の合意を得て行われる友好的TOBと、対象会社の取締役会の合意を得ないで行われる敵対的TOBがある。

友好的TOBの場合は、経営陣は適正な買付け価格だとして株主に買付けを受け入れることを勧告する。また買収後、旧経営陣が経営に留まることが多い。

一方敵対的TOBの場合は、経営陣は買収対抗策を講ずることとなる。経営陣の買収対抗策として、「ホワイトナイト」「ポイズンピル」「パックマン・ディフェンス」などがある。

また、発行会社自身が自社株に対して公開買付けを行うこともある。