益金不算入

益金不算入とは、法人税申告書の税務調査の際、企業会計上は収益として計上するが、税法上は益金の額として計上しないこと。「益金不算入制度」ともいう。
法人を介して事業を行った場合に相対的に税負担が重くなることを回避するための措置で、受取配当等や法人税等の還付金、資産の評価益などが挙げられる。

益金とは、資本等の取引によるものを除いた法人の資産を増加させた収益の額を指す。

一般的に、法人税の課税所得金額は下記のように算出される。
企業会計上の利益(当期純利益)+加算項目(益金算入、損金不算入)-減算項目(益金不算入、損金算入)

これにより、減算項目に「益金不算入」がある場合、会計上の利益よりも所得が小さくなり、損益計算書の利益を元に計算される法人税等の額よりも実際の納税額が減少する結果となる。

2015年度税制改正において、益金不算入の対象となる株式等の区分が、従来の3区分から4区分に変更となり、益金不算入割合及び負債利子控除対象が見直された。
2015年4月1日以後に開始する事業年度から適用されている。

株式譲渡所得

株式譲渡所得とは、株式を譲渡することによって得られた所得のこと。

株式譲渡価格から、株式取得価格や仲介会社への手数料など売却のために直接要した費用を差し引いた金額のことを指す。

企業の合併や買収が行われる際、売却側の企業が、自社の持ち株を売却するということは、会社売却したことと同じ意味を持つ為。買収側が対象の企業の持ち株や、株主から株を買収することによって、買収が成立。子会社化する方法として用いられる。
そのため、会社売却した企業や株を売却した株主は、売却した時の利益である株式譲渡所得を申告する必要がある。また、株式譲渡所得には一定の税率が課せられているため、その分の納税義務が発生する。

偶発債務

偶発債務とは、現時点では発生していない債務だが、将来一定の条件を満たした場合に債務になる可能性のある債務の総称である。

偶発的に発生するため、その負債総額を正確には予測できないという特徴がある。
具体例としては、債務保証や係争中の損害賠償債務、先物売買契約、手形割引、裏書譲渡などが挙げられる。

保証の時点では、債務となる可能性は低いと判断され、債務として財務諸表の貸借対照表に計上はしないが、その内容を貸借対照表に注記をすることで関係者に情報提供を行う必要がある。
発生の可能性が高まった場合は、引当金として貸借対照表等に計上し、債務として確定した時点で負債に計上される。

M&A成立後に発覚した場合は企業価値の低下につながるため、買い手側はデューデリジェンス(買収監査)の段階で偶発債務を見つける必要がある。
偶発債務は潜在的なリスクで有るため、いつ出てきても対応できるようリスク管理が重要となる。

源泉徴収

源泉徴収とは、給与・利子・配当などの所得を支払う者(源泉徴収義務者)が、給与を支払う際に所定の方法に基づき所得税額を計算し、支払金額から所得税や社会保障費などを差し引いて国に納付すること。
「源泉徴収制度」とも呼ばれる。

給与所得の他、退職所得、株主などの配当所得、原稿料、著作権使用料などの雑所得も徴収の対象になる。
M&Aにおいては、自己株買いなどでみなし配当が生じた時にも必要になるため注意が必要である。
いずれの場合も、徴収漏れがあると加算税など新たな課税対象となる。

日本では1940年からドイツに倣って実施された制度で、この源泉徴収によって徴収された所得税の差額調整に関しては、サラリーマンや公務員などは年末調整で行われる。自営業者を対象としたものは確定申告などがある。
なお、2013年から2037年は、所得税の源泉徴収にあわせて復興特別所得税も徴収される。

組織再編税制

組織再編税制とは、合併、会社分割、現物出資、事後設立、株式交換、株式移転などの組織再編行為に関する税務体系のこと。

会社が組織再編成を行った場合に、実質的に経済実態に変更がなく、移転した資産・負債は原則として時価で譲渡したものとして考えられるので、譲渡損益を計上する。この譲渡損益を繰り延べることが出来る制度のことを、組織再編税制という。

適格組織再編の適格要件を満たす場合にのみ適用される特例である。
主な適格要件としては、移転資産に対する法人支配が、再編成後も継続していることが求められる他、対価要件、事業関連性要件、事業規模要件、経営画策要件などを満たす必要がある。
合併、分割など各組織再編の形式により異なるため、ケース毎に確認が必要。

「組織再編」とは、一般的に会社の組織と形態を変更する会社法上の法律行為を意味する。
合併、会社分割、株式交換、株式移転があり、吸収型の組織再編である、吸収合併、吸収分割、株式交換と新会社設立を伴う新設型の組織再編である、新設合併、新設分割、株式移転とに分類出来る。
会社が他の会社に事業を譲渡する事業譲渡や株式会社から持分会社(合名会社・合資会社・合同会社)への変更、またはその逆を行う組織変更は、一般的にこの組織再編に含まれない。

相続税評価

相続税評価とは、国税庁の定める「財産評価基本通達」に基づいた評価額をいい、相続税を計算する際に必要となる。

土地や建物などの不動産や預貯金、有価証券、生命保険、死亡退職金などの相続財産が相続税の対象となる。

単独相続、分割相続する時に用いられ、特に分割相続の協議の場においては、相続財産の評価や相続税評価を明確にすることで、協議を円満に進めることが出来る。

会社が正当な継承者によって相続された場合には、この相続税評価により支払う税金額が決まるが、M&Aで合併や会社売却した場合、買収された会社は、買収により得た譲渡所得から、支払う税金の額が決まる。国の定めた一定の税率がそれぞれに課せられる。

また、買収する側は、その対価に対して消費税が課税される場合がある。事業譲渡などを含む課税資産の譲渡の場合、対価に消費税分上乗せした金額を支払う必要が生じ、また、その取引の金額が適正な価格でないとみなされた場合、寄付金課税が生じることもある。

なお、2015年に相続税が改正され、土地を相続する場合の多くが相続税の対象となった。

退職所得

退職所得とは、退職に伴って勤務先から支払われる所得をいう。

M&A成立時には、譲渡オーナーが代表取締役を退任することが多いため、M&Aの対価を株式譲渡代金と役員退職金との組合せで支払われることが多い。

株式譲渡所得とは、株式を譲渡することによって得られた所得を言い、次の式で算出する。
株式譲渡所得=株式譲渡価格-株式取得価格-仲介会社への手数料等直接要した費用

M&Aの対価を株式譲渡代金と退職金を組み合わせることで、全額を株式譲渡代金として受け取るよりも、オーナーは後の税金支払いを抑えられるケースがある。
具体的には、退職所得は分離課税となっており、また退職金の金額から退職所得控除額を引いたうえで、さらにその金額を2分の1にしてもらえる軽減措置があり、税金が安くなるように考慮されている為である。

適格組織再編

適格組織再編とは、適格要件を満たす組織再編(合併、会社分割、現物出資、株式交換、株式移転、現物分配等)の総称のこと。
税務上、資産・負債の評価は帳簿価額のまま、時価との差額である譲渡損益については、所有が継続しているため、繰り延べることができる。

適格と認められる為には、移転資産に対する法人支配が、再編成後も継続していることが求められる他、対価要件、事業関連性要件、事業規模要件、経営画策要件などを満たす必要がある。
合併、分割など各組織再編の形式により異なるため、ケース毎に詳細な確認が必要である。
適格要件を満たさない組織再編を「非適格組織再編」という。

組織再編を行う上で適格・非適格の判断を誤ると、多額の損益が発生してしまうことが想定される為、税理士等の専門家に十分な確認、相談が必要となる。

配当所得

配当所得とは、所得税における課税所得の区分の一つで、株主が法人から受ける配当に係る所得をいう。
厳密には、下記の配当に係る所得が含まれる。

  • 法人から受ける剰余金の配当や分配、利益の配当
  • 公社債投資信託及び公募公社債等運用投資信託以外の投資信託の収益の分配
  • 投資信託及び特定目的信託の収益の分配

配当所得は、利子所得、不動産所得と同様、資産性所得の一つである。

配当所得の金額は、収入金額(源泉徴収される前の金額)から株式などを取得するための借入金の利子を差し引いたもので、会社清算に伴う株主への配当もこれに該当する。

原則として、配当所得は確定申告の対象だが、「確定申告不要制度」を選択も可能。

また、一定税率で分離課税される譲渡所得と異なり、原則は累進税率による総合課税となる。上場株式等の配当所得の場合は、総合課税の他、確定申告する上場株式等の配当所得の全額について行う申告分離課税を選択可能である。

非適格組織再編

非適格組織再編とは、適格要件を満たさない組織再編(合併、会社分割、現物出資、株式交換、株式移転、現物分配等)の総称のこと。
税務上、資産・負債の評価は時価で行い、譲渡損益として認識することができる。

適格に該当するための要件は、合併、分割など各組織再編の形式により異なるため、ケース毎に確認が必要となるが、一定の要件に満たした場合適格とされ、資産・負債の評価は帳簿価額のままであり、時価との差額である譲渡損益については繰り延べられる。

非適格の場合、資産・負債を時価で移転するということは、通常移転前後で当該資産・負債を支配している者は異なるため、移転の際に清算(売却)し譲渡損益として課税の対象となる。

組織再編を行う上で適格・非適格の判断を誤ると、多額の損益が発生してしまうことが想定される為、税理士等の専門家に十分な確認、相談が必要となる。

非適格合併、非適格分割型分割では「みなし配当」が発生することもある。

分離課税

分離課税とは、一定の所得を他の種類の所得と合算せず、分離して課税することをいう。
「分離課税制度」とも呼ばれる。
個人が株式、土地、建物を譲渡した場合や退職した場合などの所得を計算する際に適用する。

現在日本の所得税は、原則、総合課税として、各種の所得金額を合計し総所得金額を求め、累進税率に基づき(課税方式で)税額を計算して、確定申告によりその税金を納める。しかし例外的に、分離課税によって、他の所得とは合算せず、その所得単独で税額を分離して計算するものもある。

分離課税は、特定の所得について、他の所得と総合すれば税負担が過重となったり、一定の政策目的を促進したりするなど、所得の性質等の違いを考慮したものとなっている。

分離課税の方式は下記の二種類がある。

  • 源泉分離課税:他の所得に関係なく一律で源泉徴収され、課税関係が終了する。確定申告の対象にはならない点が、申告分離課税と異なる。
    例)預貯金や一般公社債の利子など。
  • 申告分離課税:他の所得と合算せず分離して税額を計算し、確定申告により納付する。確定申告を行う点が、源泉分離課税と異なる。
    例)土地・建物等の譲渡による譲渡所得や株式の譲渡所得、山林所得など。

みなし配当

みなし配当とは、会計法上の配当ではなくても、税法上配当であるとみなされ課税関係が生じるものをいう。「みなす配当」とも呼ばれる。
未上場会社の自己株式の取得減資、利益積立金の資本組み入れや組織再編等により株主が金銭等の交付を受けた場合等に発生することがある。

一定の条件に該当すると、会社の内部に留保されていた利益の払い戻しと考えられる部分について、正規の配当金と同様にみなされて、配当金としての課税が行われることとなる。

みなし配当の規定が適用されるのは、一定の事由により法人が株式等の売却を、その発行した法人に売却した場合に限られる。
特に合併によって株式の売却がおこなわれた場合に多いのが特徴。
但し全ての合併において、みなし配当の規定が適用されるものでは無く、適格合併を行った場合は金銭の交付が行われないため適用されない。また、分割型分割を原因とした株式の売却が行われた場合も、適格分割型分割を行った場合はみなし配当は適用されない。

また、全ての法人から受けるものに対して適用されるものでは無く、公益法人等から受け取る配当や人格のない社団等から受ける配当についてはみなし配当の適用規定は無い。

累進税率

累進税率とは、累進税を課する際の税率のこと。累進税は課税標準の増加に伴って高い税率を課する税のことで、これには二種類ある。

  • 単純累進税率:課税標準が一定額以上となった場合、その全体に対して、より高い税率を適用するもの。
  • 超過累進税率:課税標準が一定額以上となった場合、その超過金額に対してのみ、より高い税率を適用する

例としては、所得税、相続税、贈与税などは、「超過累進税率」が採用され、高額所得者ほど、より高い税率で税が課されている。

また、消費税や固定資産税、法人税などは、課税標準の大小に関係なく一定の比率を適用するもので、これらは累進ではなく、比例税率となっている。