遺言

遺言とは、一般的には、形式や内容にかかわらず広く故人が自らの死後のために遺した言葉や文章のことで、「ゆいごん」と読まれることが多い。

法律上の遺言は、民法960条で規定され、死後の法律関係の最終意思とみなされ、一定の方式に従っていないものは、不成立となる。
法律用語としては「いごん」と読まれることが多い。

通常の場合、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言のいずれかの方式になる。

自筆証書遺言は、遺言者が自書した上で押印して作成するもの。こちらはいつでもどこでも書くことができ、費用もかからない。
しかし、書き方を間違えてしまうと遺言としての効力を発揮できない。また、紛失のリスクもある。相続に納得していない親族がいる場合、偽造される可能性もあり、保管時にも注意が必要である。

公正証書遺言は、遺言者が公証人に内容を伝えて、遺言書の作成と保管をしてもらうもの。自筆証書遺言と違って公証人が作成するため、遺言の効力が発揮できないという事態を避けられる。また、公証役場に保管されるため、盗難や偽造の心配もない。

秘密証書遺言は、遺言者が作成した遺言書を封印して、公証人に保管してもらうもの。公証役場に保管されるため、盗難や偽装の心配はない。内容のチェックは行われないため、不備で効力が発揮できない可能性がある。

事業承継などの対策としての遺言書作成は、公正証書遺言が推奨されることが多い。

エスクロー

エスクローとは、取引の際に買い手と売り手の間に第三者(エスクロー業者)を仲介させることで、取引の安全性を確保するサービス。日本語では、第三者預託と訳される。

昔から企業間では利用されていたが、ネットオークションなど相手の信頼性を確認することが難しい個人間取引の広がりにともない、利用が広がった。
金銭取引以外では、ソフトウェアのソースコードや技術情報についても第三者に預けておく、ソフトウェアエスクローもある。預けておくことによって、預け主が倒産した場合などでも、その設計図やソースコードを確保できるなどの用途にも使われる。

M&Aにおいては、買主がエスクロー業者に代金を入金し、その旨をエスクロー業者が売り主に通知。
売り主は株式等をエスクロー業者に預け、条件成就の後、エスクロー業者は両社にそれぞれ代金と株式等を交付する。代金を第三者に預けておくことによって、契約義務違反があった場合の損害賠償額の確保や、クロージング後に価格が変動した場合の対応策として使われている。

買戻条項

買戻条項とは、M&Aにおいては、主に株式譲渡契約における付帯条項として用いられる条項である。

一定の条件を元に譲渡した株式を買い戻す権利を付与する条項を言う。ただし、実態としては経営権が移転し、権利関係が複雑となるため、クロージング後の解除又は買戻の特約が付されることは稀である。

ベンチャー企業がベンチャーキャピタルから投資を受ける際、投資先ベンチャー企業が株式公開できなくなった場合等に、当該ベンチャー企業またはその経営者が、ファンドの保有する株式を買い戻す旨の条項を付する、といった形で使われる。
ただし、実態としては上場が絶望的となった企業は買い戻し義務を履行する能力に乏しいケースが多く、有名無実という見解もある。

不動産売買契約の場合には民法579条以下に規定があるが、不動産売買以外の場合にも買戻特約を付することができ、当事者間では有効である。

M&A取引においては、経営権が移転し、権利関係が複雑となるため、経営権の移転完了後の解除又は買戻の特約が付されることはほとんど無い。

株主間協定

株主間協定とは、株主間においてある事項について取り決めを行うこと、あるいはその内容をいう。

M&Aの場面において、株式譲渡や第三者割当増資の結果として、限定された複数の株主により会社が運営される場合、複数の株主間で被支配会社の運営方法やルール等を定めた株主間協定が締結されることがある。

株主間協定で定められる一般的な項目には下記の様なものがある。

■株式に関して
譲渡を制限や売却方法や価格、新株発行の制限など
■会社運営に関して
株主総会での議決権や、取締役の選任、取締役会の決議事項に関する取り決めなど
■その他
各株主間での意見相違で、決議がなされない場合の決着方法や競合禁止条項、契約解除条項など

交渉過程で合意に至った数々の事項は、株主間協定として残すことはM&A成功に欠かせないといえる。

基本合意書

基本合意書とは、LOI(Letter Of Intent)とも言われ、譲渡企業、譲受企業双方の契約の意思を確認するための文書を指す。条件等の詳細が書かれたものから、大まかなものまで内容はさまざまである。

主な内容としては、基本合意書を締結した時点で想定している下記項目が記載される。

  • M&Aの手法
  • 対象・対価・役職員の処遇などの基本的な取引条件
  • 支払いのタイミングやデューデリジェンスの期間などに関するスケジュール
  • デューデリジェンスに関する協力義務
  • 独占交渉権
  • 秘密保持義務
  • 費用負担
  • 裁判管轄
  • 準拠法

独占交渉権や秘密保持等の取引の協議・交渉の枠組みにかかわる規定を除いて法的拘束力を持たせない(ノンバインディング)のが一般的である。
法的拘束力がないとはいえ、後日、最終契約書における基礎となるものであるため、その後の交渉を事実上拘束するということには注意が必要となる。

基本合意契約は、譲渡企業と買い手候補企業の両社にとって、成約に向けての大きな区切りであり、このプロセスを経て、買収監査など、より具体的な作業に入ることになる。

競業避止義務

競業避止義務とは、M&A後に売主が対象会社と競業するような事業行為を行い、買主に損失を与えることを避けるために、売主が負う競業禁止の義務のこと。

M&Aにおける売主が、譲渡後直ちに同様の事業を開始してしまうと、買主がM&Aの目的を果たせなくなるため、M&Aにおける契約書では売主に対して一定期間・範囲の競業避止義務条項を盛り込むことが一般的である。

会社法上、競業避止義務が課されるのは事業譲渡の場合だけであるが、当事者間の特約により株式取得や合併などでも、競業避止義務が課されることがある。
事業譲渡の場合には会社法21条に明文規定があり、事業を譲渡した会社は、当事者の別段の意思表示がない限り、同一の市町村の区域内及びこれに隣接する市町村の区域内においては、その事業を譲渡した日から二十年間は、同一の事業を行ってはならないとされている。

しかし、事業譲渡の場合でも、当事者間の特約によって、その内容の拡大、縮小、排除が可能と解されている。

さらに特約がある場合には30年間、同一の事業を行うことができず(同2項)、不正競争の目的をもって同一の事業を行うことは期間に関係なく許されない(同3項)とされている。

業務提携

業務提携とは、資本の移動を伴うことなく、企業同士の技術や販路、ノウハウ等を相互で提供しあうことにより、相互に利益をもたらす関係構築を目指す提携のことをいう。

業務提携の種類としては下記の様なものがある。

  • 生産、製造の一部を委託する生産提携
  • 販売ルートや販売ノウハウを持っている企業に販売を委託する販売提携
  • 企業が共同で技術開発を行う、または既存の技術を相互に供与する技術提携

より強固な提携を意図する場合には、業務提携と資本提携を同時に行い「資本業務提携」とする場合もある。資本提携は、当事者となる企業の一方が、他方の企業の株式を取得する、又は双方が互いの株式を取得することであるが、資本業務提携は、業務提携に加えて資本提携による株式の異動を伴うことで、業務提携を単独で行う場合よりも連携をより深めることができる。
なお、業務提携、資本提携、資本業務提携のいずれも法令での定義はない。

支配権を完全に取得するような買収では、対象会社が上場会社である場合、上場廃止になってしまのを避けるために、資本業務提携が行われることがある。

詐害行為

詐害行為とは、債務者が債権者を害することを知りながら、故意に自己の財産を減少させ、債権者が正当な弁済を受けられないようにする行為のこと。

破産処理においては下記のようなルールが存在する。
■債務者の財産は換金され債権者に配当される
■優先債権(税金、社会保険、労働債権など)を除き、配当は債権者に一律でなければならない
これらのルールに反することが詐害行為となる。

具体的には下記の行為が詐害行為に該当する。

  • 破産申立て直前に不動産などの財産を他者へ贈与したり、安価で売却したりする行為
  • 破産申立て直前に不動産などの財産に担保権を設定する行為
  • 破産申立て直前に特定の債権者への支払いや返済行為
  • 破産申立て時に認められている自由財産以上の現金や預金の隠蔽行為

債権者はこれを一定の場合に取り消すことができる(民法424条「詐害行為取消権」)ので、債権者に指摘され破産管財人に否認されれば返還しなければならなくなる。

【詐害行為取消権】
民法424条 ①債権者は、債務者が債権者を害することを知ってした法律行為の取消しを裁判所に請求することができる。ただし、その行為によって利益を受けた者又は転得者がその行為又は転得の時において債権者を害すべき事実を知らなかったときは、この限りでない。
②前項の規定は、財産権を目的としない法律行為については、適用しない。

【詐害行為の取消しの効果】
民法425条 前条の規定による取消しは、すべての債権者の利益のためにその効力を生ずる。

シニアローン

シニアローンとは、従来からある通常貸付金のことで、返済の優先順位が高く、返済期間が短いローンをいう。劣後ローンの対義語にあたる。

貸し手側としては、他の債権よりも優先的に弁済が行われるため低リスクである。
万一、債務者からの返済が滞った場合、債権者は貸付に設定された担保や保証を使って回収を行うことになるが、シニアローンの債権者が劣後ローンより、優先的に回収することができる。

借り手側からすると、金利を抑えて調達することが出来るが、その分、審査が厳しいため、資金調達に時間を要したり、必ずしも希望の全額を調達できるとは限らない。

多くの場合は有担保の貸付となり、保証やコベナンツ(誓約条項)なども融資条件に入れられる為、相対的に最もリスクの低いものである。買収資金の調達額のなかで最も大きく、50%を超えることが通常で、高い場合には80%程度の比率を占めることもある。

譲渡承認取締役会

すべての株式に譲渡制限に関する定めのある会社を株式譲渡制限会社という。当該会社の株主が、誰かに株式を譲渡する場合には、取締役会、あるいは株主総会の許可を得なければ譲渡できない。

当該会社の株主が株式を売却する際、その会社が行う取締役会のことをいう。

この規定があれば、会社が望まない人物に自社の株式を持たせない様にすることが出来るが、会議の場で否決した場合は、会社で株式を買い取るか、会社で新たな買い手を探さなければならない。

株式譲渡制限会社にすることによって、会社法の中の中小規模企業向けの規定が適用され、下記のようなメリットが生まれる。

  • 役員の任期を10年まで延長可能となる。
  • 取締役会を設置しなくてもよく、取締役が1名以上いればよい。
  • 取締役・監査役の資格を「株主に限る」などと制限することが可能。
  • 相続による株式の分散や、会社にとって不都合な人物が相続により株式を取得することを防止できる。
  • 株主総会開催通知を原則開催日の1週間前、または条約によっては短縮することが可能となる。
  • 監査役の業務を会計監査に限定できる。

相続

相続とは、人が死亡したときにその人の権利・義務をも含めた包括的財産を、特定の人が引き継ぐことをいう。
亡くなった人を「被相続人」、財産を引き継ぐ人を「相続人」と呼ぶ。
被相続人の親族は次の順位で相続人となる(887条・889条)。
被相続人の子
被相続人の直系尊属
被相続人の兄弟姉妹
また、被相続人の配偶者は常に相続人となり、上記の順位で相続人となった者と同順位で相続人となる(890条)。

相続の方法には、主に次の3つがある。
■法定相続 民法で定められた人が定められた分だけもらう相続
■遺言による相続 被相続人が遺言書により相続の内容を決める相続
■分割協議による相続 相続人が全員で協議し、遺産の分割方法を決める相続

承継される包括的な財産を相続財産(遺産)という。

中小企業金融円滑化法

中小企業金融円滑化法とは、2009年に成立した「中小企業者等に対する金融の円滑化を図るための臨時措置に関する法律」の通称。
現状において、ゾンビ企業が多く残存するきっかけとなった法案と言われている。

これにより、金融機関は中小企業からのリスケジュール等の金融支援に具体的な再生計画の提示等がなくても応じる必要性が生じた。

同法律は、平成25年3月31日までに限り延長されたが、それ以降は同法律の適用はなくなり、実質的には認定支援機関による再生計画の策定件数を増加させることにより補填する施策がとられている。

金融庁は、期限を迎えたが、引き続き関連省庁と連携し、以下を柱とした取組みを実行するとしている。

  • 金融機関による円滑な資金供給を促進する施策
  • 中小企業・小規模事業者に対する経営支援策
  • 個々の借り手への説明・周知等

提携仲介契約

提携仲介契約とは、M&AにおいてはM&Aのアドバイザーに対してM&Aに関する仲介業務を依頼する契約のこと。

M&Aは買い手にとっては自社を成長させ、売り手にとっては売却によって利益を得たり、後継者問題の解消などという目的があり、実際のM&Aの工程には様々な専門知識が必要となる。
交渉の開始から契約の締結までを効率的に行うため、アドバイザー業者と「提携仲介契約」を締結する。
この契約が結ばれた後、アドバイザー企業は売り手に対して個別の相談や資料の収集を行い、買い手に対してはノンネームと呼ばれる資料での提案や秘密保持契約の締結、具体的な資料の提出などを行う。

契約書には、業務範囲、報酬、有効期間、秘密保持、仲介者の義務・責任などが記載される。

特別決議

特別決議とは、株式会社の株主総会において、議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した株主の議決権数の2/3以上を以って可決される決議をいう。
特別決議事項の代表的なものは、定款変更、取締役・監査役の解任、会社の解散・合併、事業譲渡、資本の減少等がある。

決議要件は、以下の順に厳しいものとなる。
普通決議<特殊普通決議<特別決議<特殊決議<株主全員の同意

会社法における特別決議を要する事項(特別決議事項)

  • 譲渡制限株式を会社が買取る際の買取事項の決定,指定買取人の指定(309条2項1号,140条2項・5項)
  • 株主との合意による自己株式の有償取得の場合の取得事項の決定(309条2項2号,156条1項)
  • 全部取得条項付種類株式の取得に関する決定(309条2項3号,171条1項)
  • 株式併合(309条2項4号,180条2項)
  • 募集株式の事項の決定(309条2項5号、199条2項)*新株予約権につき同様(309条2項6号)
  • 募集株式の事項の決定の委任(309条2項5号,200条第1項)*新株予約権につき同様(309条2項6号)
  • 株主に株式の割当てを受ける権利を与える場合(309条2項5号、202条3項4号)*新株予約権につき同様(309条2項6号)
  • 募集株式の割当て(309条2項5号,204条2項)*新株予約権につき同様(309条2項6号)
  • 累積投票により選任された取締役の解任(309条2項7号)
  • 監査役の解任(309条2項7号)
  • 役員等の会社に対する損害賠償責任の一部免除(8号,425条1項)
  • 資本金の額の減少(309条2項9号,447条1項)
  • 定款の変更(309条2項11号、466条)
  • 事業の全部の譲渡(309条2項11号,467条1項1号)
  • 事業の重要な一部の譲渡(309条2項11号,467条1項2号)
  • 事業の全部の譲受け(309条2項11号,467条1項3号)
  • 事業の全部の賃貸(309条2項11号,467条1項4号)
  • 事後設立(309条2項11号,467条1項5号)
  • 解散((309条2項11号,第471条)
  • 解散した会社の継続(309条2項11号,473条)
  • 会社法第5編(組織変更,合併,会社分割,株式交換及び株式移転)の規定により総会決議を要する場合(309条2項12号)
  • 消滅株式会社等(吸収合併消滅株式会社,吸収分割株式会社及び株式交換完全子会社)の吸収合併契約等の承認等(783条)
  • 存続株式会社等(吸収合併存続株式会社,吸収分割承継株式会社又は株式交換完全親会社)の吸収合併契約等の承認等(795条)
  • 消滅株式会社等(新設合併消滅株式会社,新設分割株式会社及び株式移転完全子会社)の新設合併契約等の承認(804条)
    注: 組織変更においては総株主の同意が必要(776条1項)

匿名組合

実務上はTK(ティーケイ)とも呼ばれる。
匿名組合とは、出資者が組合員となり事業者に資金を提供するという形態の組合であり、その営業より生じる利益の分配を受けることを約束する契約形態のとこをいう。
その法的性格は株式会社や任意組合への出資とは異なり、出資者は単に利益の配当を請求する権利を有するだけで、組合財産に対する持分はなく、損益又は資金のみが分配される。

出資者が陰に隠れて利益の分配にあずかるだけで、取引相手に対して名前が顕れないことから「匿名」と呼ばれる。

また、匿名組合は団体ではない。法的には営業者と匿名組合員の間の双務契約に過ぎず、法人格も有しない。

商法第535条の規定では、匿名組合員の出資は営業者の財産となり、匿名組合員は営業者の行為について第三者に対して権利及び義務を有しないとしている。
反面、匿名組合員が自己の氏名などを商号として使用することを営業者に許諾した場合には,その使用以後に生じた債務について、連帯責任を負う必要がある(商法第537条)。

ノンリコースローン

ノンリコースローン(非訴求型融資)とは、返済原資となる責任財産を限定したローンのことをいう。ノンリコースファイナンスともいう。また日本語で、責任財産限定型ローン、責任財産限定特約付ローン等と呼ぶこともある。

債権者の追求が債務者の人的責任に及ばないことから、ノンリコース(非遡及)と呼ばれる。企業やファンドが投資リスクを限定しつつ、大型の資金調達を実施することができる。

通常の融資では、担保を処分しても債務が残る場合、その後も返済の義務がある。それに対し「ノンリコースローン」は、特定の事業を対象にした融資となる。
借り手は責任財産からのキャッシュフローのみを返済原資とし、その範囲を超えての返済義務を負わない。原則として保証人を必要としない。

新規投資を行う企業は、100%子会社として新規投資のみを行うためのSPC(特別目的会社)を作り、銀行は当該SPCに融資をするという形を採る。当該投資が失敗に終わった場合でも、投資とは関係のない本業に影響を及ぼすことを、回避できる。

金利は、通常の融資より高めに設定されるため、金融機関にもメリットがある。

破綻懸念先

破綻懸念先は、破綻が懸念される債務者に対する金融機関の自己査定上の呼称。実務上「ハケ」と呼ばれることもある。

具体的には、経営破綻の状況にはないが、経営難の状態にあり、経営改善計画等の進捗状況が芳しくなく、今後、経営破綻に陥る可能性が大きいと認められる債務者(金融機関等の支援継続中の債務者を含む)をいう。

金融機関は、金融庁の「金融検査マニュアル」に従って各取引先を5つの債務者区分(破綻先、実質破綻先、破綻懸念先、要注意先、正常先)に分類する。
破綻懸念先に格付けされると、新規の融資は困難になり、既存融資の早期回収や既存融資金利の上昇なども求めらる。
決算書上は、二期連続債務超過かつ融資の返済が三ヶ月以上延滞、もしくは融資の返済が六ヶ月以上延滞
のいずれかを満たす融資先は該当する恐れがある。

表明保証条項

表明保証条項は、M&Aの交渉において特に争点となりがちな条項である。

表明保証条項はM&Aの最終契約書に盛り込まれる条項であり、デュー・デリジェンス(買収監査)で判明した事実について譲渡側オーナーが買い手側に対して真実であると表明し、買い手側が知りえなかった事実で譲渡後に判明した瑕疵について一定期間保証をすること。

条項に反した場合は、損害賠償の対象となったり、契約解消となる場合がある。
買い手側にとってはこの条項があるおかげで安心してM&Aを進めることができるようになるが、その分売手としてはリスクをかかえることとなるため、M&Aの成立を目指す上ではバランス感が重要となる。

日本の民商法上では想定されておらず、表明保証条項の内容は最終的に、当事者間の交渉と調整によって決まる。
表明保証条項の内容は以下のようなものが一般的である。

■事前の調査で開示された情報に偽りがないこと
■財務諸表、会計帳簿に偽りがないこと
■買主に対して開示していない偶発債務(現在は債務ではないが、手形割引・裏書による償還義務、債務保証など、将来一定の条件下で債務になる可能性があるもの)が存在しないこと
■対象会社に、買主が把握していない訴訟の提起がないこと

ブリッジローン

ブリッジローンとは、調達に時間がかかる際に、一時的に当座の資金をつなぐための融資であり、つなぎ融資と呼ばれる。

資金調達の目途はたっているものの、調達するまでに時間がかかり、必要とする日に間に合わない場合に組む短期融資のことで、通常利用できる融資よりも金利が高めに設定されることが多い。

一般に、大型融資を受けるまでや、債権回収までといった一定の条件下で利用される。しかし例外的に、長期的に資金確保が困難なケースでも、金融市場の波乱要因になる場合や債務者が公的機能を担っている場合には、政府保証付きでブリッジローンが実行されることもある。
日本では2010年に経営破綻した日本航空に対して、国民生活へ影響が大きいとの理由で、政府保証付きのつなぎ融資が実行された例がある。

M&Aにおいては、ファンドが手許現預金が厚い会社を買収する際には、事業価値以外に多額の資金が必要になるため、SPC(特別目的会社)と共に利用することが多い。
買収完了後、つまりSPCと買収対象会社の合併後に返済する。

ブリッジファイナンスともいう。

プロラタ方式

プロラタ方式とは、会社が複数の金融機関から借入をしている際に、借入金額に応じて比例的に返済額を決めて、返済することをいう。プロラタは、「比例配分できる」という意味のProratable(プロラタブル)の略称。
事業再生段階で、弁済についてリスケジュールを実行する際に、複数の金融機関の間で不公平が生じないように、このような方式がとられる。

具体的には、複数の金融機関から借り入れを行っている場合に、会社はプロラタ方式を利用し均等に返済額を決めて返済することによって、金融機関の間において不平等を発生せずに均等に返済することが可能となる。このように明確な返済方式をとれば、毎月きちんと返済ができるため、金融機関からの信頼を損なわないで済むというメリットがある。

例として、毎月総額200万円をプロラタ方式で返済する場合は下記の様になる。

  • 3社でそれぞれ10000万円、6000万円、4000万円の債権を有するとすると、債権総額2億円となりその割合は各々50%、30%、20%となる。
  • 月返済額200万円を上記割合で按分するとそれぞれ100万円、60万円、40万円を毎月返済することとなる。

劣後ローン

劣後ローンとは、他の債権よりも支払順位が劣る融資のこと。

貸し手側からすると、通常の再建より返済順位が低い為、リスクが高い。万が一融資先が解散したり破綻した際、負債を全て支払った後に資産が残っていれば債務が弁済されるが、債務超過で会社更生法などが適用され場合は、まず返済される見込みがない。そのリスクの高さゆえに、通常債権より金利は高く設定される。

借り手側にとっては完済期限が伸び、期限一括返済になることで短期的な負担を減らすことが出来る。

日本では1990年から解禁された。株式(特に無議決権優先株)に近い性質を持っている為、金融機関では自己資本規制比率上の自己資本の一部とみなされる(企業会計上は負債になる)。

このことから、バブル崩壊後の金融危機や経営難の際に、多くの銀行や生命保険会社などで用いられた。
また銀行への公的資金投入の際、一部でこの方式での資本注入が行われた。

ADR

ADRとは、Alternative Dispute Resolutionの略称で、裁判外紛争解決手続のこと。
民事上の紛争の解決を、裁判ではなく公正な第三者による紛争解決の手段で、裁判所の民事調停や民間団体の手助けを受けて紛争の解決を図ることをいう。

現行の裁判制度を利用した場合、解決までに長い期間を要し、費用も高額になる可能性がある。このため、2004年に「裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律」(通称ADR法)が制定され、2007年4月から実施された。

ADRでは民間事業者が和解の仲介を行う場合、適正を審査し、法務大臣がADR機関として認証する制度が設けられた。
ADR機関には、司法機関の簡易裁判所、家庭裁判所や行政機関の公害等調整委員会をはじめ、国民生活センター紛争解決委員会や民間機関の交通事故紛争処理センター、生命保険協会などがある。
ADR機関に紛争の一方の当事者から申し入った際に、紛争の相手が手続に応じることを確認したのち、実際に手続を任される第三者が決定される。

また、ADRの種類には斡旋、調停、仲裁があり、それぞれ下記の様な特徴がある。

■斡旋:第三者を介した当事者同士の話し合いによって解決を目ざす
■調停:第三者が和解案を示し、当事者同士の互譲を促しながら円満な解決に導く
■仲裁:争いの間に入り、仲裁案を示して解決すること。仲裁は強制力をもつため、双方が合意すると、同じ紛争問題で裁判を起こすことは出来なくなる。

DDS

DDSとは、Debt Debt Swap(デット・デット・スワップ)の略で、既存の負債(Debt)を別の負債(Debt)に転換(Swap)すること。中小企業の企業再生、特に債務超過に陥っている企業再生の手法として活用される。

金融機関が既存の貸付金を、支払い順位が劣る劣後ローンに変更することを指す場合が多い。例えば、MA銀行に最初にローンを返済しなければならないとして、このDDSを行うことになり、MA銀行への返済は後回しにすることが可能になる(劣後)。

債務者側からすると、返済義務を負うものの、返済猶予ができることにより負担が軽減し、財務状態の改善や信用力を高め、再建の可能性を高めることが出来る。

しかし、金融機関からDDSを受ける場合、特定の財務指標を一定数値以上に維持しなければ、優遇措置が取り消されるなどの特約が課される可能性がある。

DIP

DIPとは、Debtor in Possession(デター・イン・ポゼッション)の略で、占有を継続する債務者の意。旧経営陣が残って再建を行っている企業を指す。

具体的には、民事再生法等の倒産手続きを行いながらも、旧経営陣に経営が任されているような企業である。このような企業に短期融資を行うことを、DIPファイナンスという。

DIPファイナンスは、再建企業に安定的に資金を供給することで、対外的な信用力を向上させ、再建計画の円滑な履行を可能とするのが目的。
基本的には、再建企業の事業から生まれる利益などから返済を受けることを前提とする。そのため、財務状況、損益状況、資金繰り、再生計画等についての事前調査や、事後のモニタリングが必要となる。

日本では、国によるDIPファイナンスへのサポートがない為、不良債権を持つリスクを負いたくない金融機関は融資に消極的であった。そのため、取り扱いは主に日本政策投資銀行など政府系金融機関が中心となっていたが、近年、民間金融機関の中にも取り組みがみられる。