キラー・ビー

キラー・ビーとは、敵対的買収で標的となっている企業を援護する勢力のこと。

具体的には被買収企業側のアドバイザー(インベストメント・バンカー:投資銀行員)を指す。
証券引受やM&Aの業務を行う投資銀行が、キラービーと成りえ、攻撃を受けている買収される側の企業のアドバイザーとして、敵対的M&A合戦の中で戦略を構築する。

語源は1956年に研究のためにブラジルに輸入されたアフリカ蜂に由来。
輸入された474匹の女王蜂の子孫26匹が、誤りによって外部に解き放たれてしまった。たったの26匹だったのだが、人間や家畜にとっての甚大な被害を及ぼし、1970年代までに200人が死亡したとされる。この蜂は攻撃性があり、数時間しつこく襲い続ける上に、行動範囲が広いことから、どこまでも攻撃対象を追い続けるという性質をもつ。
この性質が、敵対的買収の攻防の場において、被買収企業側のアドバイザー(インベストバンカー)の、敵対側に対して、防衛のみならず強い攻撃を仕掛ける点や、特に脆弱な部分を見つけてしつこく攻撃し続ける性質と似ていることから、彼らを「キラー・ビー」と呼ぶようになった。

クラウン・ジュエル

クラウン・ジュエルとは、敵対的買収に対する防衛策のひとつ。

買収を仕掛けようとしている側にとって魅力的な資産や事業を売却・分社化することで、買収への意欲をなくさせる方法である。焦土化作戦等もいう。

この言葉は、王冠が狙われている場合に、その王冠に組み込まれている宝石を取り外すことで、王冠の魅力を低下させ、狙われなくするということになぞられて用いられている。
なお、会社法で、企業の重要な事業を譲渡する場合には株主総会の特別決議が、重要な財産の譲渡のためには、取締役会の決議が必要とされている。

ただし、このような財産譲渡を行う場合、この決定は株主の価値を毀損しかねないため、決定を下した取締役は、取締役としての忠実義務違反を問われる可能性も有る。

ゴールデンパラシュート

ゴールデンパラシュートとは敵対的買収に対する防衛策のひとつ。日本語で「黄金の落下傘」の意。

敵対的買収が行われた後は、現任の経営陣や役員が解任されるケースが多い。ゴールデンパラシュートはその点に着目し、あらかじめ巨額の退職金契約をしておくことで、買収後の出費が多い事から、買収への意欲を減じさせる効果が見込まれる。

通常、ゴールデンパラシュートに使われる退職金の額は取締役の年収の3倍程度であると言われている。
買収の際には、従業員がリストラで解雇される中、経営陣や役員が高額の退職金を持って退職するのは印象が悪い為、条件付きのストックオプションのような形態をとったりする。
ゴールデンパラシュートという名称は、買収によって乗っ取られた企業から脱出する手段として、お金をパラシュートに見立てた表現から来ている。
同様に、従業員の退職金を高額にする対抗策をティンパラシュート(ブリキの落下傘)ともいう。

米国では、ゴールデンパラシュート は取締役にとっての保険としての要素が強く、敵対的買収に対する対抗措置ではなく、むしろ敵対的買収を促す効果があるとの見方もある。

ジューイッシュ・デンティスト

ジューイッシュ・デンティストとは、敵対的買収に対する防衛策のひとつ。

敵対的買収の標的になった際に、マスコミを利用して買収者のネガティブイメージを宣伝することで、社会的信用を貶めることでTOBを失敗させる方法である。
社会的信用を大きく下落させられた買収側は株式公開付けをしても、既存株主から相手にされず、更に一度失った社会的な信用を回復させるために、資金を投入しなくてはならず、買収資金が圧迫されることとなる。

ジューイッシュ・デンティストは直訳すると「ユダヤ人の歯科医」。
アラブ資本が入った会社が、ユダヤ人の歯科器具メーカーの敵対的買収を図ったときに使われた防衛策であることから来ている。
買収ターゲットにされた企業や歯科医師たちは、その買収を画策した企業のネガティブキャンペーンを行い、社会的信用を失墜させることに成功。買収企業は信用回復に大きな資金を投入しただけでは無く、買収資金の調達も難しくなり、結果株主もTOBに応じなくなった。

スーパー・マジョリティ条項

スーパー・マジョリティ条項とは、敵対的買収に対する防衛策のひとつ。

株主総会における決議要件を定訳によって予め厳しく設定し、買収後の意思決定がスムーズに進まないようにすることで、買収への意欲をなくさせる方法である。

例えば、通常、買収・合併など特別決議を要する重大決定を行う際には全株主の三分の二以上の賛成を要するが、これを「全株主の90%以上の賛成を必要とする」という内容を定訳に盛り込んでおくなど。

しかし、自社が苦境に立たされ、会社を売却しなければ存続できない事態となってしまった場合、せっかく友好的な形のM&Aが成立しそうになっても、このスーパーマジョリティ条項を満たすことができないことが原因で、成立しないということもある。

敵対的買収から自社を保護したり、敵対的買収を行おうとする買収側の意欲を減退させる手段としては有効だが、状況によっては、自分自身の意思決定の妨げとなる可能性があるので、その点は十分注意する必要がある。

スタッガード・ボード

スタッガード・ボードとは期差選任取締役(会)の意。「捻じれた役員会」などともいわれる。

敵対的買収に対する防衛策のひとつで、取締役の改選時期をずらし、同時に全ての取締役が入れ替わることがないようにすることで、経営権を掌握されるまでの時間稼ぎをする方法。

具体的には、取締役を複数のグループに分けて、取締役の選任時期を意図的にずらすことにより、仮に他企業(買収側)から自社が買収されても、取締役を一度に交替させられるという事態を避ける。これにより、敵対的買収企業側に実質的な経営権を握られるまでに時間稼ぎをすることがきる。

スタッガード(Staggered)には「互い違いにする、ずらす」等の意味と、「決心をぐらつかせる」という意味があり、スタッガード・ボードは、この双方の意味を含めた言葉だと考えられる。

バックエンド・ピル

バックエンド・ピルとは、敵対的買収防衛策であるポイズンピルの一種。
新株式を発行する余地がないため、ポイズンピルを用いることができない場合に、このバックエンドピルの活用が検討される。

買収標的となる会社が、一定の条件を満たした場合に、株主に対して持株を債権や現金に交換できる権利を付与することによって、買収コストを高め、買収を断念させる戦略のこと。

株式の一定比率が買い占められ、この買収が、株主の権利に基づく債権・現金の交換価値より高い価格で実行されないような場合に、この権利が有効になる。

バックエンド・ピルは名目上、株主の投資を保護する役目を持つ。しかし、敵対的な買収者が企業を買収しても、経営が改善され企業価値が高まる見込みが高い場合、現経営陣の保身のためにこの方策を用いることが株主の利益になるとは限らない。

パックマン・ディフェンス

パックマン・ディフェンスとは、敵対的買収対抗策のひとつ。被買収企業が、逆に買収企業に対して買収をかけることをいう。

1980年代にヒットしたテレビゲームの「パックマン」が由来。
同ゲーム中でパックマンは、普段はモンスターに追われているが、パワークッキーを食べると逆にモンスターを食べて反撃することができることになっている。
そのため、敵対的買収者をモンスター、被買収企業をパックマンに見立て、敵対的買収者に対して、ある時点から、逆に買収をしかける被買収企業の防御の方法を「パックマン・ディフェンス」という。

例えば、被買収企業が敵対的買収者そのものを買収すれば、当該企業の買収を企図している企業の取締役を解任して、買収されるのを止めることができる。
レバレッジド・バイアウト (LBO) などのように金融機関を媒介にして「小が大を食う」買収が仕掛けられた際の対抗策として有効である。

ただし、相手が買収可能な上場会社でなければ発動できない。

また、被買収企業がホワイトナイトに依頼し、買収企業の株を大量取得して買収する方法も存在する。

プロキシー・ファイト

プロキシー・ファイトとは、株主総会の議決において株主が議決権獲得を会社の経営陣と争うこと。委任状争奪戦と訳される。

経営陣と敵対する買収者が、取締役の選任、定款の変更、合併等の重要な事項の承認を得るために、一般株主から議決権行使の委任状(プロキシー)を取り付け、多数派工作を行う場合に用いられることが多い。

日本では下記の様な事例がある。

  • TBSの2007年6月開催の株主総会において、筆頭株主である楽天グループが、『三木谷浩史楽天社長らの社外取締役選任』などを求める株主提案を提出し、TBSとの間でプロキシーファイトを繰り広げた。
    採決では、TBS株主の賛同を得られず、圧倒的な反対多数で否決された。
  • 大塚家具における、2015年(平成27年)3月開催の株主総会において、大塚勝久氏と大塚久美子氏の創業者一族内での「お家騒動」が勃発。1月経営陣の父親、大塚勝久氏が、現経営陣の娘大塚久美子氏の退任を要求して、株主に委任状を送付したが、結果、父親のプロキシーファイトは功を奏さず、大塚久美子氏側の勝利で終了した。

銀行や取引先などとの株の持ち合いが減る一方、ファンドなど「モノ言う株主」が増えているため、今後、経営陣の提案に株主が異を唱え、委任状争奪戦に発展する例が増える可能性がある。

ポイズン・ピル

ポイズン・ピルとは、敵対的買収を仕掛けられた企業側がとる買収防衛策の一つ。毒薬条項ともいう。

新株予約権を予め発行しておき、一定の条件が満たされると、予め時価よりも安い価格で新株式を引き受けられる権利を与えておき、株式を希薄化することで買収する側の持ち株比率を下げ、かつ買収側のコストを上げるなどの効果を期待する仕組み。
被買収企業側が用意しておく「毒薬」という意味でこの呼び方がされる。

アメリカでは、ポイズン・ビルにも下記のような種類が存在する。

・フリップイン・ポイズン・ピル(flip-in poison pill):買収成立前に、買収者以外の全ての既存株主に対して、割安価格で買い増しする権利を与えておく
・フリップオーバー・ポイズン・ピル(flip-over poison pill):買収後に買収会社を割安価格で買い付ける権利を与える

日本ではかつては新株予約権付株式は認められていなかったので、信託型ライツプランが最も幅広く用いられていた。
2006年5月1日施行の新会社法の下で、取得請求権及び取得条項の取得対価として新株予約権をつける事が可能となり、事実上の新株予約権付株式の発行が可能となった。

ポイズン・ピルとライツプランは同義ではないが、日本ではほぼ互換的に用いられる。

日本国内においては、2005年にライブドアのニッポン放送の買収を防ぐために用いられた事例などがある。

ホワイトナイト

ホワイトナイトとは日本語で「白馬の騎士」の意。

敵対的な買収を仕掛けられた会社に対し、友好的な買収又は合併により敵対的買収を回避するパートナーを指す。
これは買収防衛策の一つで、白馬に乗った騎士が企業を助けるといったイメージからきている。

敵対的買収者が現れた後、その買収者よりも高い価格でTOBをかける(カウンターTOB)、
もしくは友好的な相手に行う第三者割当増資や新株予約権の付与をすることなどが考えられる。

日本では下記のような事例がある。
2005年のライブドアのニッポン放送買収の事例では、当時SBIホールディングスの北尾吉孝氏がフジテレビ側のホワイトナイトとして名乗りをあげ、貸し株というスキームでフジテレビ側を救済した。
2007年には、日清食品が明星食品を、米投資ファンドのスティール・パートナーズの敵対的TOBの提案を上回る価格で買収した。

反対に敵対的買収を仕掛ける企業を「ブラック・ナイト」と称することもある。